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松坂大輔は「いい買い物」になるか。
日本での成績を占う“球速とカーブ”。
posted2014/11/28 11:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
松坂大輔のソフトバンク入りが秒読みとなっている。
松坂には、まだまだメジャーで力を証明したいという気持ちがあると推察するが、一部報道ではソフトバンクとの契約は4年16億円になると言われており、いま、松坂にこれだけの契約内容を提示するメジャーの球団はない。
そして今季はマイナー契約ゆえの悲哀をメッツで味わっただけに、なにより落ち着いた立場で先発を任されることが日本復帰へ傾いた大きな理由ではないか。
個人的には、一世を風靡したスターが再び日本のマウンドに上がるという道筋は悪くないと思っている。
投手としての「変容」を観察できるからだ。
そこで今回は、松坂の投球内容がメジャーに渡った2007年と2014年ではどう変化したのかを吟味していきたい。
トミー・ジョン手術の球速への影響は?
Fangraphs.comを参考にしながら話を進めていくが、ポイントは次のふたつだ。
・ストレート系の球速
・「軟投派」への転身
松坂はレッドソックス時代の2011年にトミー・ジョン手術を受け、復帰後に移籍してメッツでプレーしたわけだが、一般的にこの手術の後は、球速が上がるケースが珍しくない。
それは手術自体が球速を速くするのではなく、長く厳しいリハビリテーションによって身体が変化するからと言われている。松坂の場合、どうか。
年度 | チーム | ストレート系 | スライダー | カット ファスト ボール |
カーブ | チェンジアップ | スプリット | 不明 |
2007 | レッドソックス | 52.7% (91.9) |
17.2% (82.3) |
14.6% (86.9) |
5.1% (77.4) |
4.7% (80.9) |
5.8% (82.8) |
1.10% |
2008 | レッドソックス | 52.2% (91.8) |
23.1% (81.7) |
15.0% (88.6) |
4.1% (78.5) |
3.8% (82.2) |
1.8% (82.9) |
0.70% |
2009 | レッドソックス | 53.8% (91.1) |
20.1% (81.7) |
16.3% (88.3) |
1.7% (79.4) |
5.6% (81.1) |
2.5% (82.0) |
0.50% |
2010 | レッドソックス | 57.2% (92.0) |
19.7% (81.7) |
15.3% (90.2) |
0.6% (76.4) |
6.6% (81.5) |
0.6% (86.2) |
1.00% |
2011 | レッドソックス | 49.8% (90.3) |
24.2% (79.8) |
14.0% (89.2) |
― | 7.5% (79.4) |
4.6% (84.6) |
― |
2012 | レッドソックス | 46.0% (90.9) |
20.9% (80.4) |
22.9% (89.4) |
0.4% (75.3) |
7.6% (81.1) |
2.2% (84.5) |
― |
2013 | メッツ | 45.6% (88.9) |
16.6% (78.8) |
16.0% (87.9) |
15.7% (73.0) |
2.4% (76.8) |
3.8% (80.7) |
― |
2014 | メッツ | 43.5% (90.3) |
17.1% (80.5) |
23.3% (89.1) |
11.9% (74.4) |
0.1% (78.0) |
4.0% (79.7) |
1.00% |
合計 | 51.7% (91.4) |
19.7% (81.4) |
16.4% (88.7) |
4.5% (75.9) |
4.6% (81.1) |
3.1% (82.5) |
0.80% |
2007年、レッドソックス移籍当初は、ストレート系の球速は平均92.4マイル(およそ148km)出ており、投球の柱となっていた。ところが、手術前には90マイル(およそ144km)ほどに落ち、かつての速球派のイメージはなくなっていた。
そして復帰後の2013年の平均値は88.8マイル。手術後に球速がアップするというケースは、松坂の場合は当てはまらなかった。