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ザックジャパンの戦術的な問題は、
主力と監督の“歩み寄り”が生んだ!? 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byItaru Chiba

posted2014/08/10 10:40

ザックジャパンの戦術的な問題は、主力と監督の“歩み寄り”が生んだ!?<Number Web> photograph by Itaru Chiba

ザックジャパンの立ち上げから、日本の攻撃を牽引してきた遠藤保仁と本田圭佑。実らなかったとはいえ、彼らが新たなオプションに挑戦していたことは覚えておきたい。

「速攻」と「遅攻」でのザックのコンセプトとは。

 昨年10月、日本は東欧に遠征し、セルビアに0-2で、ベラルーシに0-1で敗れた。W杯に出場しない中堅国に負けたことで、ザックジャパンは大きな批判にさらされた。ただし、その舞台裏では本田と遠藤が新たな「近い距離感」を試み、一定の手応えを得ていた。しかしザッケローニ監督の考えは違い、2人からの提案はベルギー遠征で「却下」されたのだった。

 この問題を理解するには、攻撃をボールを奪ってすぐに仕掛ける「速攻」と、相手がブロックを作った状態から攻める「遅攻」に分けて考える必要がある。

 ザックの速攻のコンセプトはシンプルで、いい形でボールを奪い、そこから少ない手数で縦に速く攻めるというものだ。

 一方遅攻のコンセプトは、「サイドにおける数的優位」がキーワード。サイドMF、サイドバック、ボランチがうまく絡んで、相手に対して数的優位な状況をサイドで作り、そこを起点にブロックを崩すというやり方だ。

 だがライン際にサイドMFを開かせると、どうしても中央の選手との距離が遠くなってしまう。そうなると日本人の俊敏性や連動を生かしたワンツーやショートパスの交換は難しくなる。

 相手がどんどん前に出て来るタイプだと、それを逆手にとって「速攻」によってうまく攻め返せるが、相手が自陣深くにブロックを作るタイプだと、ザック流のサイド攻撃では手詰まりになってしまう。だから本田と遠藤は、「近い距離感」による攻撃も引き出しのひとつとして持ちたいと考えたのだ。

「継続して来なかったツケが回ってきた」

『Number Plus』のブラジルW杯総集編に掲載された遠藤のインタビュー(聞き手はスポーツライターの佐藤俊氏)を見ると、ブラジルW杯で何があったのかがさらに立体的に浮かび上がって来る。第2戦のギリシャ戦について、遠藤はこう語った。

「一番恐いのはペナの内だけど、俺らはそこにボールを運べなかった。ペナ内に人がいないし、2列目からの飛び出しやドリブルがなかった。ワンツーなど人と人との距離を縮めて攻める工夫もなかった。それができなかったのは、そういう練習をしてこなかったから。たとえば、人との距離を縮めてパスを繋いで崩すやり方は昨年、セルビア戦、ベラルーシ戦でトライした。でも、うまくいかなかった。監督から『それじゃダメだ』って言われて、今まで通りのやり方に戻した。そこで諦めずに継続して来なかったツケが回ってきたね」

 諦めずに継続して来なかったツケが回ってきた――。この一言にザックジャパンの問題点が凝縮されている。

【次ページ】 長谷部誠が昨秋に感じていた、チームの「分岐点」。

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