SCORE CARDBACK NUMBER

メキシコで王者を育成する、元教師の日本人トレーナー。
~本場も認める古川久俊の手腕~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2014/07/15 10:00

デラホーヤ、カントら名選手を育成したへスス・リベロと指導法について語り合った古川。

デラホーヤ、カントら名選手を育成したへスス・リベロと指導法について語り合った古川。

 メキシコと聞いて、ボクシング・ファンがまず頭に浮かべるのは、年配の方なら“ロープ際の魔術師”ジョー・メデルや“ミスターKO”ルーベン・オリバレス、あるいは“Zボーイズ”といった驚異のKOキングたち。若いファンならJ・C・チャベス以降の英雄たちか。

 勇壮なパワーファイトが好まれる一方で“リングの大学教授”ミゲル・カントや、王者のまま夭逝したサルバドール・サンチェスらの洗練されたボクシングも魅力だ。ただ往時と比べると最近は怪物的選手も少なくなった感がある。

「確かに落ちてはいるが、それはよき指導者たちがいなくなったからで、優れた素材はまだまだいるよ」

 そう語るのはメキシコ在住の日本人トレーナー、古川久俊だ。8年前まで福井県の高校教師だったが、一念発起してメキシコシティに居を構え、トレーナー見習いからスタート。指導した選手から何人もの王者が誕生し、いま現地でもその手腕が大いに評価されている52歳だ。

ホルヘ・リナレスを打ち破ったJ・C・サルガドを育てた。

 '09年に“ゴールデン・ボーイ”ホルヘ・リナレスがJ・C・サルガドに初回TKO負けで世界王座を追われる大番狂わせがあったが、来日直前までサルガドを指導し、奇襲作戦を授けたのが古川だった。

 古川は短期間でマスターしたスペイン語、持ち前の強い意志と旺盛な探究心を武器として、メキシカン・ボクシングを学んできた。ジムでの指導に留まらず、往年の世界王者にインタビューしたり、あるいはユカタンまで出かけ、引退した伝説のトレーナー、ヘスス・リベロに直接指導を受けている。最近ではプロモーターにまで活躍の場を広げているようだ。

 学生時代は空手とキックボクシングの選手だったが、ボクシング不毛県の一つといわれた当時の福井に教師として赴任してからは、校長と対立しながら高校ボクシングの普及に尽力した。当時の教え子には後の世界王者・清水智信もいる。

 ボクシングジムは「街の学校」といわれるが、正に人間教育が古川のモットー。職場は違えども今もメキシコシティのジムでミットを手に変わらない教育を実践している。夏には8年間のメキシコ体験を綴った『ビバ・メキシカン・ボクシング』も刊行されるが、副題の「究極の強打と至高の技術」はメキシカン・ボクシングをピタリと表現するフレーズだ。

関連コラム

ページトップ