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樫惜敗も凱旋門賞に挑む天才少女ハープスター。
~3歳牝馬の“優位”を生かして~ 

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byKYODO

posted2014/06/08 10:00

樫惜敗も凱旋門賞に挑む天才少女ハープスター。~3歳牝馬の“優位”を生かして~<Number Web> photograph by KYODO

 殊勲の星をあげたヌーヴォレコルト(牝3歳、美浦・斎藤誠厩舎、父ハーツクライ)が、今後どれほどの栄光を積み重ねて行くかで人々の印象が変わっていく可能性はあるだろう。しかし'14年のオークスは「ヌーヴォレコルトが勝った」ではなく、「ハープスターが負けた」レースとしてファンの胸に深く刻み込まれた。

 現代競馬の常識からかけ離れた、最後方待機から直線大外強襲という戦法だけで敵をなぎ倒してきたのがハープスター(牝3歳、栗東・松田博資厩舎、父ディープインパクト)という天才少女だ。このオークスも、桜花賞のときの18番手からではなかったものの、最後方に近いポジションから直線で大外に持ち出して一気の脚を繰り出した。上がり3ハロンは33秒6。これは出走メンバー中最速で、勝ち馬よりコンマ6秒も速いのだから、伸びきれなかったという論評は的を射ていない。あの戦法自体が自信過剰という論評も耳にするが、そこは当事者以外にはわからない事情があるはず。好き好んで危ない橋を渡っているはずはない。

3歳牝馬なら54.5kgで出走できるのが大きな魅力。

 とはいえ、2着という結果はやはり重い。単勝130円の圧倒的な人気に応えることができなかった川田将雅騎手は、「申し訳ありません。今日は追ってから内に刺さる感じで弾けませんでした」と潔くファンに詫びた。それでも着差は僅かにクビ差、しかも勝ち馬と同タイム。これほどの脚を使ったのに非難に近い視線を送られるというのも、ハープスターが天才だからに他ならない。

 2400mが適距離だったかどうかという精査も必要と思えるところだが、敗戦後にノーザンファーム代表の吉田勝己さんから「予定通り、秋は凱旋門賞(10月5日、フランス・ロンシャン競馬場、芝2400m、GI)に行きます」と、高らかな宣言が飛び出した。昨年のオルフェーヴルが59.5kgを背負ったレースに、3歳牝馬なら54.5kgで出走できるのが大きな魅力。日本のホースマンが悲願とする凱旋門賞制覇の夢を、この天才少女に託そうというわけだ。

 それにしても、調教師ではなく、生産者、オーナーの側から重要な決断が発表されるというのも、最近の競馬界の力関係の傾きを物語ってはいないか。最大の違和感をそこに感じてしまった。

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