SCORE CARDBACK NUMBER

「雄星」から「菊池」へ。
大物左腕、勝負の2年目。
~一軍キャンプ帯同が決定~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/01/23 08:00

「雄星」から「菊池」へ。大物左腕、勝負の2年目。~一軍キャンプ帯同が決定~<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

昨年の11月22日、初めて契約更改に臨んだ菊池。現状維持でサインし今季の飛躍を誓った

 今から約1年前。学生服とジャージしか用意せず入寮した純朴な青年がいた。今時珍しいと思われたのだろうか。先輩選手たちはそんな姿を見てかわいがり、自分の私服をプレゼントとして贈っていた。洋服を贈られた青年とは当時18歳の菊池雄星。昨年6球団競合の末、西武に入団したルーキーだ。

 このまま育てば日米のスカウトを唸らせた剛球を必ずや見せてくれるだろう、と楽しみだったが、やはりプロの世界はそこまで甘くない。結局一軍での登板はゼロ。左肩痛に悩まされ続け、一度狂った歯車が元に戻ることはなかった。

 有名ブランドで着飾った選手が多くいたことが、自分ひとりだけ浮いていると思った理由なのだろうか。あるいはファンに慕われるように登録名を「雄星」に変えられたことが、球界への違和感となったのだろうか。周囲の評価ばかりを気にして自分を見失ってしまい、雄星が雄星でなくなっていったような気がする。

一般家庭で育った躾のよさが落とし穴になっている!?

「同じ年齢でありながら、服装面でも全てが洗練されていると思った」

 フレッシュオールスター戦出場が決まって調整をしていたある日、雄星はこんなことを漏らしていた。それなら逆に開き直ればいいのに、出来なかった所に雄星の持つ「常識人」の弱さが見え隠れする。

 プロ野球はある程度、獰猛な肉食系でないと生き残れない。一般家庭で育った躾のよさが、野球に必死に打ち込む「野球バカ」をどこか軽蔑する思考を生んでいるように思う。そうでなければ通信教育で大学入学、という発想は出てこないはず。今の雄星にはその辺りの思考回路を「プロ仕様」に直す必要があるのかもしれない。渡辺監督も「甲子園常連校でもまれた選手と、地方からいきなり勝ちあがった選手の違い」と指摘している。

 しかしある球団関係者は「自主トレ初日、室内練習場で投げた時の素晴らしさは頭から離れない」と言い依然として評価は高い。小野和義投手コーチも「指が縫い目にかかった時の球は、さすがと思わせる。今はガムシャラにやらなければいけない時だけどね」と語っている。

 オフは故郷に戻り母校でトレーニングをすると言う。原点回帰になるのか、それとも故郷の温もりを満喫するのか。雄星が菊池に変わり、再スタートを切ることを期待して今季も見守りたい。

■関連コラム► 長野、荻野、雄星、筒香……。'09年ドラフト1位選手の○と×。
► 新人は生意気と謙遜どちらが良い? 田中将大と雄星にみる「プロ1年目」。

関連キーワード
菊池雄星
埼玉西武ライオンズ

ページトップ