ブラジルW杯通信BACK NUMBER

メッシ、全てを得た男の最大の挑戦。
母国の不信と代表引退危機を超えて。 

text by

工藤拓

工藤拓Taku Kudo

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2014/05/12 10:50

メッシ、全てを得た男の最大の挑戦。母国の不信と代表引退危機を超えて。<Number Web> photograph by Getty Images

2011年に就任したサベージャ監督からキャプテンに指名され、予選を戦う中で国中の信頼を勝ち得たメッシ。26歳、キャリアのピークと言える年齢でのW杯は彼がいまだ持たないフル代表でのビッグタイトルをもたらすだろうか。

 今季のメッシはワールドカップ前にケガをせぬよう、力をセーブしながらプレーしているのではないか。

 相次ぐ筋肉系の故障に悩まされ、1年近くも不安定なパフォーマンスを見せ続ける中、メッシはたびたびそんな疑問を向けられてきた。

 その真偽は本人にしか分からないことだが、確かに彼の置かれた状況と最近のプレー内容を見る限り、そう疑いたくなる気持ちは理解できる。

 何より既にチーム、個人共にクラブレベルで獲得可能なタイトルは全て獲り尽くしてしまったメッシにとって、残された挑戦と言えばアルゼンチン代表でのタイトル獲得しかない。2005年のワールドユース、2008年の北京五輪で優勝の立役者となったものの、まだフル代表では何1つタイトルを勝ち取ることができていないからだ。

 18歳で経験した2006年のドイツワールドカップでは、PK戦で敗れたドイツとの準々決勝を120分間ベンチから見守った。2007年のコパ・アメリカでは最優秀若手選手に選ばれる活躍を見せたものの、決勝ではブラジルに0-3と完敗している。

 2010年のワールドカップではディエゴ・マラドーナ監督と共に大会の主役となることが期待されながら、ドイツとの準々決勝で0-4と派手に散った。そしてホスト国として優勝が義務づけられた2011年のコパ・アメリカでも準々決勝でPK戦の末ウルグアイに敗れ、南アフリカに続いて無得点のまま大会を去っている。

母国でのプロ経験がなく、国民からは遠い存在。

 13歳でスペインへ渡ったメッシはアルゼンチンでプロとしてプレーした経験がないため、元々母国の人々にとってシンパシーを抱きにくい存在だった。

 そんな背景もあり、アルゼンチンのファンやメディアはこうした大会で期待を裏切られるたび、「金をもらっているバルセロナでしか本気でプレーしない」といった厳しい批判をメッシに浴びせてきた。

 それはナイーブな性格のメッシにとって大きなプレッシャーとしてのしかかり、次第に彼は代表でプレーすること自体をストレスに感じるようになってしまう。とりわけ母国のピッチで地元ファンからブーイングを受けたコパ・アメリカの後には、本気で代表引退を考えたこともあったくらいだ。

【次ページ】 過去の代表監督たちが目指した「メッシ・システム」。

<< BACK 1 2 3 NEXT >>
1/3ページ
関連キーワード
リオネル・メッシ
ディエゴ・マラドーナ
セルヒオ・バティスタ
アレハンドロ・サベージャ
ブラジルW杯

ページトップ