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2011年が楽しみとなった、
有馬記念の好レース。
~物議をかもした“審議”の余波~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byKiichi Yamamoto

posted2011/01/15 08:00

その差2cmで有馬記念を制したヴィクトワールピサ。3歳馬として8年ぶり15頭目の栄冠

その差2cmで有馬記念を制したヴィクトワールピサ。3歳馬として8年ぶり15頭目の栄冠

 いまだに物議を醸すジャパンカップの降着“事件”。ブエナビスタの斜行が競走妨害にあたると判定されたことについては納得という見解に大勢がようやく傾いたが、審議に時間がかかり過ぎたことに対する批判は、今後も事が起きるたびに蒸し返されることになりそうだ。揺るぎない裁決基準があれば、事情聴取に多くの時間を割く必要はない、と思う。

 その記憶がさめないうちに起きたのが朝日杯FSの審議。パトロールビデオを確認するとはっきりわかるのが、1着入線のグランプリボスが4コーナーで併走状態だったアドマイヤサガスを外に押し飛ばしている事実。被害馬が着順を下げた意味から言えば、この妨害のほうが罪深いように思うのだが、裁定はセーフだった。10分余りの審議時間でも十分に長く感じたが、この判定に対しては納得の声のほうが少数意見。着順を変えないにしても、騎手は騎乗停止が妥当だったのではないか。短時間でベストの選択をするのは難しいに違いないが、裁決もプロならばそれを遂行しなければならない。

あまりにも大事に乗りすぎたブエナビスタのスミヨン騎手。

 1年を締めくくる有馬記念は、武豊騎手会長から「きれいなレースをお見せしなければいけない」と外国人ジョッキーも含めて、号令がかかっていたという。それが効いたのか、審議ランプが灯らない好レース。皮肉なことに武豊騎手のローズキングダムは出走取り消しになってしまったが、裏方となってもその存在感は大きかったようだ。

 とはいえ、ブエナビスタのスミヨン騎手は、あまりにも大事に乗り過ぎた感が残った。絶対に届きそうにない位置から、最後は鬼脚で追い込んできてのハナ差惜敗。まさに負けて強しの競馬だが、当事者は歯ぎしりものだったはず。早くも現役続行を表明、春には2度目のドバイ遠征が控えている。海外でのGI制覇でこの悔しさを晴らしたいところだ。

 勝ったのは前週の朝日杯FSで騎乗停止になっていてもおかしくなかったデムーロ騎手が騎乗していた、ヴィクトワールピサ(牡3歳、栗東・角居勝彦厩舎)。命拾いした幸運を、最高の騎乗に昇華させて金星を掌中に収めた。

「ああいう風に乗るしか、ブエナビスタに勝つチャンスはないと思った」と言ったのは角居調教師。若き名伯楽は、作戦家としても稀有な存在だったのだ。

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