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検量違反で垣間見えた、
“弱腰外交”と馬の力量。
~エリザベス女王杯に残る謎~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byMasakazu Takahashi

posted2010/12/16 06:00

検量違反で垣間見えた、“弱腰外交”と馬の力量。~エリザベス女王杯に残る謎~<Number Web> photograph by Masakazu Takahashi

後検量に向かう直前のムーア騎手。調教師、調教助手、騎手の計3名が厳重注意となった

 1キログラムで1馬身違う、というのは根拠の薄い俗説だが、競走馬がレースで背負う負担重量に格別な意味があるのは世界共通の認識。だからこそ、年齢や性別、あるいは生産国(南半球産馬は生まれが半年遅いことを考慮される)で国際的にアローワンス(体力的な差を埋める基礎ハンデ)が定められている。騎手の名前のそばになにげなく置かれている小さな数字は、実は相当な影響力を持っているのだ。

 検量システムは実に厳格。だからこそ騎手は負担重量に収まるための節制をして、時には常人には考えられないような減量にも挑む。レース前、騎手は馬に装着する鞍を抱えて秤に乗り、足りなければ鉛の板を持たされて調整されるし、オーバーならその程度によっては騎乗者の変更を命じられることだってある。さらには後検量。7着までに入線した馬に騎乗していた騎手に発生する義務で、万が一前検量のときとの重量差が1キロを超えたら(馬の発汗などで増えることはあり得る)失格処分になる。検量委員の目の届く所に鞍を外す場所も定められており、絶対に不正が起こり得ない制度が世界中の競馬場で確立されているのだ。

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