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「空気じゃ飯は食えません」
巨人を変える井端の“本気”。
~坂本の教育係ではなくライバルに~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byKYODO

posted2014/03/19 16:30

ノックを受ける井端。「試合は最初から出てこそ楽しい」とレギュラーにこだわっている。

ノックを受ける井端。「試合は最初から出てこそ楽しい」とレギュラーにこだわっている。

 かつて巨人はV9時代に、生え抜きの若手を刺激するために他球団のベテランを獲得し、競い合わせた。ライバル球団の選手を獲るのは、「よそで働かれるよりも、自分のところで飼い殺しにした方が良い」という発想からではないかと揶揄されたこともあった。

 中日の生え抜き中心選手、38歳の井端弘和を獲得すると聞いた時、そうした歴史が頭に浮かび、「原辰徳監督も名監督の域に近づいたかな」と思ったものだ。巨人には、井端と同じ内野手に生え抜きスター、坂本勇人がいるが、やや鮮度が落ちかかっているのも事実。井端の加入は大きな刺激になるはずだ。

 一方の井端は、古巣から事実上の戦力外の扱いを受け、巨人に拾われる形でやって来た。16年間いた中日では守備の名手として鳴らし、荒木雅博との二遊間コンビ「アライバ」は球団の屋台骨を支えた。仕事人・井端の働きぶりは、第3回WBCで土壇場に出たライト打ちでも実証済みだ。そのしぶとさを、同じ日本代表だった坂本も目の当たりにしただろう。

「自分から教えるつもりはない」というプロの矜持。

 実際に巨人でも、早くもプロとしての生き様を示す“お手本”となっている。ノックを他選手が受けるのを見て「今のは何点!」と口に出す。ゲーム形式では体勢を崩してでも右方向に徹底して打ち返し、周囲をうならせる。時には若手に交じって早朝特守をするなど、わずかなスキさえ見せないベテランの練習ぶりに、「ガツガツして憎らしい」と若手が少しでも思っただけで、巨人が井端を獲った意味はある。

 だが井端自身は、「聞かれれば答えないわけではないが、自分から教えるつもりはない」と、坂本の教育係と言われても平然としたもの。「生え抜きへの刺激などくそ喰らえ」と、あわよくば開幕スタメンまで窺いそうな勢いである。2月23日の楽天とのオープン戦では、9回に地元沖縄出身の楽天・伊志嶺忠に勝ち越し打が出て球場が盛り上がる中、その裏に逆転サヨナラタイムリーを放ち、原巨人の今季初勝利を演出した。「空気が読めないね」と冗談を言うと、「空気じゃ、飯は食えません」と言われてしまった。

 ぬるま湯につかっていた巨人の若手に、熱湯を浴びせる存在。ひょっとして、大味な巨人がイヤらしい巨人に変貌を遂げるチャンスかもしれない。

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