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ファンに喝采を浴びた
八重樫の「ロマゴン」発言。
~“強い奴と戦う”ボクサーの本能~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2014/03/08 10:45

ファンに喝采を浴びた八重樫の「ロマゴン」発言。~“強い奴と戦う”ボクサーの本能~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

 4月6日、メキシコのオディロン・サレタを相手にWBC世界フライ級王座の3度目の防衛戦を行なう八重樫東が、記者発表の席上こうコメントした。

「ローマン・ゴンサレス選手は強すぎてチャンピオンがみな(対戦を)敬遠していると聞いた。次の防衛戦が無事終わったら、僕はその挑戦を受けたい」

 よくぞ言った――これがファンの思いだろう。八重樫が名指したニカラグアの強豪は日本のファンの間で「ロマゴン」として知られ、38戦全勝32KOという不敗記録とともに「軽量級最強」の呼び声も高い。新井田豊、高山勝成もその軍門に下り、ミニマム、ライトフライ級の世界2階級を制覇。さらに3階級目を求めてフライ級に転向したばかり。同日の前座試合で“顔見せ”する予定だ。

 中南米で試合をすれば、報酬は世界戦でも僅か4万ドル前後と伝えられる。帝拳ジムの契約選手でもあり、日本で戦えばその何倍も稼ぐことができるはずだが、対戦に応じる選手がいない。正しく、強すぎるがゆえに不遇をかこっているのだ。

ファンは亀田騒動など「潔くないこと」に辟易している。

「強い奴は強い奴と戦わなければ、ボクシングをやる意味がない」

 そう語ったのは“黄金のバンタムを破った男”ファイティング原田さんだった。世間でも正論として受け止められたが、しかしボクシング界ではそうではない。

 同じ階級に強豪が2人いればファンは両者の対決を見たいと願うもの。だがこの世界のビジネスでは、負けるリスクをおかしてでもトライするには、よほど大きなメリットがなければ試合は実現しない。ロマゴンも一時、井岡一翔との統一戦が注目された。井岡自身はやりたかったろうし、実現すれば勝算も十分にあるはずだが、結局は見送られている。

 八重樫の今度の防衛戦はダブル世界タイトル戦として行なわれ、もう一つのWBCライトフライ級タイトル戦では、同じ大橋ジムの後輩井上尚弥が国内最速となるプロ6戦目での世界獲得を狙う。“怪物くん”井上にとかく脚光が当たりがちだが、「ロマゴンとやる」と口にした瞬間に八重樫株も急上昇だ。

 思えば、一連の亀田騒動も含め、最近のボクシング・ファンの不満は「潔くないこと」があまりにも多すぎることに端を発している。そんな中で今回の八重樫の意欲的な発言は久々のヒットだった。

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