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ドジャースに日本人の名スカウトあり。
20年後を見据えるMLB流選手育成術。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/01/10 08:00

ドジャースに日本人の名スカウトあり。20年後を見据えるMLB流選手育成術。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

抜群の制球力を誇る明大の西嶋一記投手。カーブ、スライダー、スクリューボールなどを速球と同じフォームで投げ分ける

 MLBのロサンゼルス・ドジャースが日本のアマチュア2選手とマイナー契約を交わした。明治大学の西嶋一記と文徳高校(熊本)の高野一哉である。日本のメディアや野球界全体は大きく騒ぎたててはいないが、大きな挑戦だと思って注目している。

 日本の野球界では、アマチュアの選手が日本のプロを経ないで海を渡るということを善しとしない風潮がある。'08年にENEOSの田澤純一(現レッドソックス)がメジャー挑戦を実現した時にはルール改正が行われるほど問題は大きくなった。一昨年の菊池雄星(西武)の際も、ドラフト前に12球団が面談するという異例の事態を招いていた。

 しかし、それはあくまでトップクラスのアマチュア選手を例にした場合だけで、いわゆる“ドラフト指名漏れ選手”であれば、特に騒ぎたてられることもない。トップアマなら「紳士協定違反だ」と散々騒ぎたて、そうでなければ無視するというご都合主義にはただ呆れるばかりだが、今回の西嶋と高野のドジャースとの契約には一つの時代の訪れを感じているのである。

「今までずっと挑戦してきた。これまでは、なかなか理解してもらえなかったが、これで変わっていくのではないか」

 高野の契約に一役買った、ドジャースの小島圭市日本担当スカウトは入団発表の記者会見でそう話している。今回、ドジャースは初めて日本の高校生と契約したことになったのだ(ドジャースは'07年に、亜細亜大のロバート・ブースと契約している)。

スカウトの確かな眼力が日本人のMLB挑戦を後押しする。

 この一件で、見逃してはいけないのは選手を見続けてきたスカウトの存在があったということである。ドジャースのスカウトとなって10年になる小島はそのキャリアの中で眼力を極めていき、評価を上げてきた。オールスタープレイヤーとなった斎藤隆(ブルワーズ)や来季の大型契約を結んだ黒田博樹(ドジャース)の成功を確信した彼の眼は、アメリカ本土でも高い評価を受けている。また、「獲る」だけではなく「獲らない」スカウティングでも的を外さない。

「僕がスカウトをして獲った選手が活躍する。それが評価されるのは当たり前のことですよね。でも、あえて『獲らない方がいい』と言って、ある選手が他のチームに行ってしまったとします。そして、その選手がそれほど活躍しなかったとして、それは評価されないのか? という話まで上司にしたんですよ。そういうのが重なって10年経ち、評価され始めてきた」

 以前、小島が話していた言葉である。

【次ページ】 練習に取り組む姿勢を見て、5年後の成長を見極める。

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