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入場は最後尾、FKはテコでも動かず。
ミランでも“オレ流”を貫く本田圭佑。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byAFLO

posted2014/01/17 11:05

入場は最後尾、FKはテコでも動かず。ミランでも“オレ流”を貫く本田圭佑。<Number Web> photograph by AFLO

ミランの練習場を去る本田圭佑。セリエAでは、練習はほぼ非公開で行なわれる。短い期間でチームとの相互理解を深めるには最適な環境と言えるだろう。

 ようやく本田圭佑に、いつもの日常が訪れようとしていた。

 イタリアでの初ゴールを決めた翌日、ACミランの練習場『ミラネッロ』は不思議な静けさに包まれていた。セードルフ新監督の練習初日を報じようと、イタリアメディアはたくさん駆けつけていた。だが、その一方で、出口で待つ日本メディアは、『スポーツニッポン』の通信員と、自分しかいなかったのだ。

 どうやら本田も、それを車の中から確認したらしい。もうカメラに取り囲まれる心配はない。本田を乗せた車はゲートから少し出たところでゆっくりと停まり、ファンサービスに応じた。

 ハンドルはイタリア人の運転手が握り、本田は後部座席の右側に座っていた。スモークがかかった窓が下りると、鮮やかな金髪が浮き上がり(イタリア到着時は銀髪だったが、どうやらサッスオーロ戦の前日に再び金髪にしたらしい)、ファンたちが車を取り囲んだ。

 昨夜のヒーローはポーカーフェイスを崩さず、次々にサインや撮影をこなした。もう何年間もミラネッロに通っているといった貫禄で。遠くにいたファンが慌てて走ってくると、もう1度停まるという丁寧さだった。

イタリアの名門でもスタンスを貫けるものなのか。

 入団当初、一部のスポーツ新聞が「ファン対応をしない」と批判したが、やはりメディアがたくさんいたから窓を下ろすわけにはいかなかったのだ。騒ぎが起きなければ、ごく自然にサインに応じる。いつも通りの本田の姿がそこにあった。

 その前日、1月15日のコッパイタリアのスペツィア戦――。

 個人的にひとつ注目していたことがあった。それは「どれだけ本田が“オレ流”を貫けるか」ということだ。

 ロシアのCSKAモスクワにおいて、本田はほぼまわりに干渉されない“キング”としての地位を確立していた。日本代表でもそうだろう。だが、はたしてイタリアの名門において、同じスタンスを貫けるものなのか? セリエAの舞台でも王様として君臨するために、それは鍵のひとつになると思われた。

【次ページ】 最後尾で入場した本田、サンシーロでも自分の歩幅で。

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