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元五輪選手が紛争地帯で獅子奮迅!
井本直歩子が選んだ、第二の人生。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoko Imoto

posted2013/12/15 08:01

元五輪選手が紛争地帯で獅子奮迅!井本直歩子が選んだ、第二の人生。<Number Web> photograph by Naoko Imoto

2009年には、日本版Newsweekの「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた井本直歩子。

「スポーツは子どもに絶対影響があるんですね」

「スポーツから受けるプラスの感情って、特に傷ついてる人にとっては大きな力になるんですね。例えばシエラレオネでは、サッカーが唯一の娯楽だった。観るにしてもやるにしても、それ以外に嫌なことを忘れられることがない。私たちもそうじゃないですか。スポーツをやっているときは楽しいし観ている時も楽しい。こんな話もあるんです。私が赴任する前の話ですが、スリランカがクリケットのワールドカップに出場して優勝したときに停戦状態になりました」

 そして、こう続ける。

「スポーツは、何よりも子どもに絶対影響があるんですね。ものすごく辛い経験をしている中でもそういう時間があると必ず和らぐ。ハイチでもルワンダでもそうでした」

日本では見過ごされがちな、海外の現実に目を向ける。

 だから、こんな夢も思い描いている。

「最初はやはり、ベーシックニーズ、つまり、水や食料の支援からになります。そこをきちんとやってからではありますけれど、スポーツの力はものすごく可能性があるし、これから、やっていけたらと思っています。

 紛争している国の中でサッカーの試合をやるとか、例えばパレスチナとイスラエルでもいいし、シリアでもいい。別に日本が北朝鮮とやってもいいと思うんです。この前、日体大のサッカー部とバスケットボール部が北朝鮮に行ったじゃないですか。関係がこじれていてどこかから打開していくときにスポーツを、というのは良い案だと思う」

 国際大会の中で海外の事情に気づき、やがて目標を定め、志を得た。オリンピックに出るほどまでに至った真摯な取り組みの日々は、今も土台となっている。

 その活動は、赴任した国の人々のためであると同時に、日本には伝わりにくい、日本では知らないままで見過ごされがちな、海外のさまざまな現実へと目を向かせもする。

 10月にハイチを離れ、しばし日本で過ごした井本直歩子は、先だっての台風で甚大な被害を受けたフィリピンの被災地、タクロバンへ赴任することが決まっている。

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井本直歩子
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