フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
スケートカナダで日本の3人が表彰台。
安定の“銀”鈴木明子、混戦の男子勢。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/10/28 12:25
エキシビションにも出場した鈴木は、再びの素晴らしい演技で会場を魅了。「グランプリ1戦目としてはいい試合だったと思います。まだ伸びしろもある」と語った鈴木。
魔が潜んでいるのか……ミスが続いた男子SP。
一方、男子の戦いは荒れた。
このセントジョンのハーバーステーションのリンクには、魔が潜んでいるのか――そう思わせるような、スケートカナダの男子の展開だった。
公式練習では、無良崇人、織田信成、羽生結弦、そしてパトリック・チャンらが豪快に次々と4回転を決めていた。だがSPでは、ノーミスで滑ったトップ選手は一人もいなかった。
「競う相手は自分自身」とコメントしたチャン。
トップに来たのは4+3ではなく3+3のトウループコンビネーションを跳んだパトリック・チャンだった。
2位は4回転トウループで転倒したが、3アクセルなど残りをノーミスできめた織田信成。そして3位になった羽生結弦は最初の4回転トウループでバランスを崩しかけたが持ち直し、3アクセルをきれいにきめたものの、コンビネーションが1ルッツ+3トウループになった。
「この大会全体に関して、自信はありました。(ルッツでは)何が起きたのかわかりません。でもまだフリーがありますから」と試合後、羽生は高ぶった神経を抑えきれない様子でそう口にした。
練習ではあれほど調子が良かったのに、何が起きたのかと聞かれたチャンはこう答えた。
「試合が練習通りにいったなら、そんなに楽なことはありません。でも現実はそうではない。公式練習では他の選手がいるので、1人が4回転を跳んだら他の選手も負けずにやる、というように競争意識が働きます。でも試合になったら自分しかいない。競う相手は誰か他の選手ではなく、自分自身なのだと改めて言い聞かせなくてはなりませんでした」
本来の実力を出せなかった日本勢。
翌日のフリーは、さらに波乱に満ちた展開だった。
SP5位だった無良崇人は、最初の4回転を2回転にするなど、強いジャンパーで知られる彼らしくもないミスが続出し、10人中10位という結果に。昨年フランス杯で優勝したときとは、別人のような演技だった。
羽生は、冒頭の4回転サルコウで転倒。
だが次の4回転トウループは、バランスを崩しかけたが耐えた。驚いたのは、彼がもっとも得意とする3アクセルを、1回転半にしてしまったことである。順位は2位に上がったものの、到底本人が納得できる内容ではなかった。
「どうしてなのか、本当にわからない。1からやり直しです」と語った羽生だが「でも(4回転)サルコウもトウループも、パンクしなかったことは良かった。それはここで得た収穫だと思います」と自分を元気づけるように言った。