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<私とラン> 角田光代 「ものすごい嫌なのに走り続ける理由」
text by
NumberDo編集部Number Do
photograph byAsami Enomoto
posted2010/12/16 06:00
走る目的もスタイルも、それぞれに異なる大人たち。
「Number」が初めて一冊まるごと“Doスポーツ”を特集した「Number Do」では、連続インタビュー企画「私とラン」で、彼らの「走る」を覗いてみました。
Number Webでは、雑誌未収録部分も掲載した「私とラン」特別編を公開。
第8回は、直木賞作家の角田光代さんに「ラン」について語っていただき
ました。
走り始めてすぐに友人たちと駅伝に出たんです。相模原の米軍基地内を4人1チームで、5km走ったんですけど、これが死ぬほどつらかった。楽しいはずの打ち上げでも一言も口を利けないほど、疲れていて。悔しいな、と思っているときに雑誌の企画で「ダイエットしませんか」と声をかけられたんです。その企画にのって、体重を落としてから走ることに再チャレンジしてみようと考え、食事制限で半年に6kg落とすと、断然楽に走れるようになったんですよ。
最初は3km走るのがやっと。でも1カ月に1kmずつ延ばしていって、20kmまで走れるようになりました。
私は強い向上心がないので、あまりプレッシャーがないんですよね。走ることは、苦しいし、嫌いだということがわかっているから、頑張らなくていい。でも、すごい、と思いますよね。「人って、こんなに楽しくないことをできるんだ」と(笑)。走ることさえなければ、その時間でどれだけ色々なことをできるのかな、と思うけど、それでも続けているのは「できる」ことが年齢を重ねるなかで減っていくのに、走れる距離が伸びることに自分でも「すごい」と思えるからかもしれません。
走ることで自分の身体が丈夫だということに気がついた。
走っているときは退屈なんで考え事ができる。夕食の献立を考えたり、一週間のお弁当のメニューをあれこれ思案したりしてます。でも走るときに、いつも身につけているGPS機能付きの時計やiPodを忘れると、途端にやる気がなくなる(笑)。GPSを利用してパソコンで走った距離が計測できるようにしているけど、その記録が残らないことが嫌なんです。
走ることで自分が変わったことはあまりないんですけど、フルマラソンに出ようという話が持ち上がったときに、1日で1箱半くらい吸っていたタバコをやめました。でも、速くもならないし、呼吸が楽になることもない。ご飯が美味しくなったということもなくて。
医者にもカルビよりも、ササミを食べたくなると言われたんですけど、まったくそんなことはないですね(笑)。でも、風邪はひかなくなりました。それまでは意識したことなかったんですけど、走ることで自分の身体が丈夫だということに気がついたんです。二日酔いでも私は走れてしまうので。