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<私とラン> 市民ランナー・楠田昭徳 「息子に背中を押されたギネスへの挑戦」 

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NumberDo編集部

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photograph byAsami Enomoto

posted2010/12/23 08:00

<私とラン> 市民ランナー・楠田昭徳 「息子に背中を押されたギネスへの挑戦」<Number Web> photograph by Asami Enomoto
いま全国で多くの大人がランに目覚め、汗を流し始めています。
走る目的もスタイルも、それぞれに異なる大人たち。
「Number」が初めて一冊まるごと“Doスポーツ”を特集した「Number Do」では、連続インタビュー企画「私とラン」で、彼らの「走る」を覗いてみました。
Number Webでは、雑誌未収録部分も掲載した「私とラン」特別編を公開。
第9回は、52日間連続フルマラソン完走ギネス記録を持つ楠田昭徳さんに
「ラン」について語っていただきました。

 私の兄は非常にすばしっこい男でね。僕はあまり足の速いほうじゃなかったから、一種劣等感を持って育ったんです。そうしたら、たまたま校内でマラソン大会がありまして、先生に「今度マラソン大会があるけど、君ちょっと頑張ったらいい成績残せるよ」って言われたんですよ。それなら、とほんのちょっと練習したら、たまたま勝ってしまって。それからはだんだん面白くなって、ランにはまっていきました。

 立教大学時代になると本当にバリバリ(笑)。箱根駅伝も4年間走りましたし、ランが自分の全てでした。ところが、あまりに走りすぎて嫌になってしまって、社会人になってからは中断したり、また走ったり……を繰り返していましたね。

 ギネスに挑戦しようと思ったのは、新聞で48歳のイタリア人男性が、フルマラソンを51日間連続で走り、ギネス記録に認定されたという記事を見たことがきっかけです。

 ただ、最初に記事を見たときは、とてつもなく難しい記録だと思ったので、すぐにチャレンジしてみようという気は全くありませんでした。僕は人生で色々な失敗を繰り返していて、経済的にも長いことどん底を経験していたんです。

目標達成の日を東京マラソンに合わせてスタート。

 そんなとき倅に「親父、もう一回何か頑張ってみなよ」と言われて、その新聞記事を思い出した。それでも、記録を破ろうと思ったわけじゃなくて、どのくらい自分はその人に近付けるのだろうという心持ちでしたね。だから本当はひそかにやろうと思っていたんですよ。

 だけどタイムを取ってもらったり、確かに走ったという証拠も残したい。そうすると一人で挑戦するには限界がある。そこで手伝いをお願いしたんですが、ある人に「ひそかにやって、できたら胸張って、失敗したら人知れず去っていくんじゃ、手伝ってても手伝い甲斐がない」と言われたんですね。「たとえ記録を破る目的で始めるんじゃないにしても、堂々と“記録に挑戦したい!”と言ってやったほうが、本当に大きな力を貸してもらえるんじゃないの?」と。

 やっぱりこそこそやって、できたときだけ「はい、できました」なんて言っても、ダメなんだなと実感しましたね(笑)。それに年も年ですから、万が一失敗しても恥ずかしいことじゃない。5日間しかできなくても、それはそれで立派な記録だし、半分まで行けば大きな自信がつくだろうし。本当に51日を超えて、52日目を達成できれば、それは自分の誇りにもなる。そう考え直して、目標達成の日を東京マラソンに合わせて、スタートすることにしました。

【次ページ】 死ぬ日まで走れる状態でいたいと思っています。

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