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猪苗代大会、返上から一転、開催へ。
モーグルW杯を国内で開催する意義。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2013/10/22 10:30

猪苗代大会、返上から一転、開催へ。モーグルW杯を国内で開催する意義。<Number Web> photograph by AFLO

今年2月の猪苗代のデュアルモーグルW杯で初優勝した伊藤みき。

 10月16日、福島県スキー連盟はフリースタイルスキー・モーグルのワールドカップを、来年3月1、2日に福島県猪苗代町で予定通り行なうと発表した。

 実は9月に、一度は開催返上を決めていた大会だった。きっかけは、今年2月に行なわれたワールドカップの際のスポンサーから、撤退の通知を受けたこと。福島県スキー連盟や全日本スキー連盟は代わりのスポンサー探しに奔走したものの、みつからなかったため、資金不足から実施を断念していた。しかし、猪苗代町から3000万円の補助金が支出されることが決まり、開催にこぎつけることができたのだ。

 ワールドカップは、シーズンを通じて、国内外の各地で行なわれる国際大会であり、オリンピックや世界選手権以上に重きを置く選手もいる重要なシリーズだ。猪苗代での大会は、日本で唯一開催される予定のワールドカップだった。返上することなく国内で実施されるのは、モーグルという競技そのものにとって、大きな意義がある。

 スキー全般の競技人口は減少傾向にある。モーグルもそれは変わらない。長野五輪で里谷多英が金メダルを獲得し、また、上村愛子の活躍で脚光を浴びた最盛期には全国で700人を超えていたというが、2010年の段階で約300人程度にまで落ち込んだと言われている。そしてその後も、増加する傾向はうかがえない。

国際大会があることが、競技の下支えをする。

 それでも一定の認知度であったり、少ないながら、モーグルを目指す子どもが現れてきたのには、ワールドカップの存在が貢献している。

 例えば同じスキー競技で言えば、クロスカントリースキーやアルペンスキーなどは、国内でワールドカップが行なわれていない。そのため、シーズン中に日本代表選手の動向が伝えられる機会はきわめて限られている。注目に値する好成績をあげたときですら、大きく報じられることはない。

 しかし、シーズンの間にたった一度であっても国内で国際大会が開かれると、状況は大きく変わってくる。大会が開かれる前後には、テレビや新聞などで日本代表選手たちがクローズアップされ、認知してもらう機会が増える。

 クロスカントリーの石田正子が、「一回でも日本でワールドカップがあれば、もう少し多くの人に知ってもらえると思うんですけれど」と言うのを耳にしたことがあるが、それも、大会が国内であることの大切さを肌身に感じているからだ。

【次ページ】 日本だと「いいところを見せよう」と思う。

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