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同郷の好敵手が見守った、
高見盛と武州山の断髪式。
~若の里が振り返る“三つ巴”~ 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byMasako Kakizaki

posted2013/10/18 06:00

同郷の好敵手が見守った、高見盛と武州山の断髪式。~若の里が振り返る“三つ巴”~<Number Web> photograph by Masako Kakizaki

断髪式で武州山に声を掛ける高見盛。同郷の2人は今年1月、同じ場所で引退を表明した。

 10月6日、高見盛の断髪式、「引退年寄振分襲名披露大相撲」が、満員の国技館でにぎにぎしく行なわれた。地元青森からバスツアーで参加した老若男女や相撲ファンで、館内は大盛況。見納めとなる高見盛独特の「気合い注入ポーズ」が披露されると、場内には大歓声が沸き上がっていた。

 その前日の土俵上には、ひとりの力士がひっそりと、まげを落とす姿があった。同郷で、奇しくも今年初場所、高見盛と引退の日を同じくした元前頭3枚目の武州山だ。本人曰く「自分は地味な力士でしたから」と、こちらは興行形式ではなく、関係者300人に見守られての静かな断髪式となった。

 大東文化大相撲部を経て、'99年1月に幕下付け出しで初土俵を踏むも、膝のケガで序二段にまで番付を落とす。それでも'08年11月、32歳で新入幕を決めた苦労人だ。翌日に自身も断髪を控えていた高見盛が、武州山の大銀杏にハサミを入れるため、駆けつけた。

「本当に尊敬できるヤツですよ」

 そういうと、土俵上の「同級生」に、いつまでも視線を送り続けていた。

今までは敵だったけど、昔話をしながら一杯やりたい。

 ともに数々の名力士を生んだ、相撲どころの青森県出身だ。中学3年の東北大会では山内(武州山)が優勝、2位が古川、3位が加藤(高見盛)だったという。その古川―若の里が感慨深げに語る。

「小学生の頃からライバルでしたから、かれこれ四半世紀になるんですねぇ。僕は15歳で入門したけれど、こうして大相撲の世界で、ふたりと対戦できてよかった。彼らとの長い戦いが、ようやく終わったな(笑)。今までは敵だったけど、昔話をしながら一杯やりたいですね」

 かつては大関候補と注目され、筋肉隆々の上半身で「ポパイ二世」の異名を取った若の里。先の9月場所では、前頭15枚目の地位で4勝11敗、来場所は十両への陥落が決定的だ。

「彼らのぶんも頑張る気になります。正直、自分ももうボロボロで、いつ辞めるかわからない。でも、もう少しだけ頑張りますよ。まだ燃え尽きていないから」

 津軽の「じょっぱり魂」で、残れる闘志を振り絞る。断髪式後、パーティ会場を汗だくで走り回る「加藤」を見つめながら、「古川」がぽつりとつぶやいた。

「実は、寂しさが一番なんですけどね」

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