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<THE DAY 2010> 長友佑都 「セリエAに衝撃を与えた日」 ~8月29日:ローマvs.チェゼーナ~ 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byAFLO

posted2010/12/09 00:00

 一人だけ、スピードの違う選手がいた。ナガトモというイタリア人に耳慣れない名の小さなDFが、ローマの守備陣を切り裂いていく。彼が前線へ飛び出す度に、マークする相手へ追走のスタートを切る度に、スタディオ・オリンピコに驚嘆の声が上がった。残暑まだ濃い晩夏のローマで、長友佑都はセリエAデビューを鮮烈に飾った。

 南アフリカW杯を経て、FC東京からチェゼーナへ移籍した長友は、逸る気持ちを抑えるように夏季キャンプを過ごした。開幕戦は昨季2位ローマ相手のアウェーゲーム、戦前の下馬評は圧倒的に不利だった。昇格組チェゼーナへの注目度は決して高くなかったが、フィッカデンティ監督の信頼を得た長友は、左サイドバックとして開幕スタメンの座を勝ち取った。

 ファーストインパクトは前半20分。左サイドを一気に駆け上がると、右から僚友ジャッケリーニのパスを受け、ペナルティエリア内から、対角線上のゴール右側に狙いすまして左足シュートを放った。ボール1個分の差で惜しくも決まらなかったが、バカンス気分が抜けきらない相手に目覚まし代わりの一撃。トップギアに入った長友は左サイドを自らの独壇場とし、前半だけでオリンピコ大観衆の度肝を抜いた。

ローマの分厚い攻撃をはね返し続け、値千金の勝ち点1に貢献。

 業を煮やした敵将ラニエリは後半に入り、長友封じともいえる攻撃的MFタッディを投入。対する長友はベンチの指示もあり守備に専念。スイス代表CBフォンベルゲンらと組む4バックの一員として、モンテネグロ代表FWブチニッチらローマの分厚い攻撃をはね返し続け、アウェーの開幕戦で値千金の勝点1を得た。

 ローマの象徴である主将トッティへもまったく臆せず、トッティへのハードマークで受けた警告処分にも、試合後「こっちもバンバン体をぶつけられたけど楽しかった」と快活に応じた。タフな対人守備もさることながら、自らのスピードを生かしたカウンター攻撃に「やれると感じた」と確かな手応えも得た。その目は爛々と輝き、さらに90分間走れそうなほど精気に満ちた長友には高揚感が漲っていた。勢いにのった長友のチェゼーナは、続く第2節、ミランを撃破。イタリアはおろか欧州中を驚かせることになる。

 8月28日、極東からやってきたDFは、その韋駄天ぶりで堅守の国イタリアへその名を強烈に刻みつけた。これから先、長友佑都は我々をどこまで驚かせてくれるのだろうか。

長友佑都 Yuto Nagatomo1986年9月12日生まれ、愛媛県出身。明治大学から'08年、FC東京に入団。北京五輪代表にも選ばれ、岡田ジャパンでも不動の左サイドバックとして活躍。南アW杯後、セリエAのチェゼーナに移籍した。170cm、68kg

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