10月26日、体操の日本代表チームがオランダ・ロッテルダムで行なわれた世界選手権から帰国した。男子、女子そろって好成績を残しての凱旋である。
男子は団体で2位、個人総合で内村航平が連覇し、種目別でも内村がゆかで銀、平行棒で銅メダル。一方の女子も、団体で5位入賞を果たしたが、これは1970年の世界選手権で4位になって以来の入賞である。
女子は、2008年の北京五輪で5位入賞を果たしたものの、今回はそのメンバーから半数が入れ替わっての出場。故障者が事前にいたこともあって、塚原千恵子監督が、「決勝には進めないかもしれないと思っていました」と大会後に口にしたように、不安をかかえて迎えた大会だった。
それを裏書きするように、団体の予選では、エースの鶴見虹子が得意なはずの段違い平行棒で落下するなど、苦しいスタートを切る。
気品ある美しい演技で日本のピンチを救った。
このピンチを救ったのが、世界選手権、オリンピックを通じ初めての日本代表となった田中理恵だった。156cmと体操では高い身長をいかした見栄えのする演技で、団体予選の各種目で好得点をマークし、8位で決勝に進出する原動力となった。団体予選の点数で決まる個人総合予選でも日本選手トップの14位で決勝へ。
団体決勝では4種目すべてに出場し、他国の強豪とひけをとらない点数で北京五輪に続く5位入賞に貢献したのである。2日後の個人総合決勝でも日本選手トップの17位に入ると、男子個人総合銀メダルのフィリプ・ボーイ(ドイツ)とともに、もっとも気品ある演技をした選手に贈られる「ロンジン・エレガンス賞」受賞というご褒美がついてきた。
いくつもの挫折を乗り越えてきた遅咲きの日本代表。
「初めての世界選手権で思い切った演技をしようと思っていました。練習どおりのことができてよかったです」
笑顔で振り返る田中は、実は23歳にして初の代表である。
10代から活躍するのが当たり前の体操では異例のことだ。そこには、いくつかの挫折を乗り越えての日々があった。
田中は、元体操選手で体操クラブを運営する父のもとで体操を始めた。兄の和仁も今大会の日本代表である。体操一家に生まれ育った田中は、中学生の頃には全国大会で活躍し、将来を期待されたが、高校に入ると、左足首の怪我に苦しめられ、思うような演技ができずに終わった。大学進学後、手術に踏み切り、競技に復帰する。
迎えた3年生は、北京五輪の年だった。だが、手術とリハビリのブランクの影響からか、選考会でチャンスをつかむことはできなかった。
「今度こそ日本代表に」と臨んだ昨シーズンも、最終選考会のNHK杯で、好位置につけながら最終日に緊張から崩れ、またしても切符を逃した。
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