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「野球は素晴らしい」と語る落合監督。
その“夢”はファンに届いているか? 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/11/01 12:00

「野球は素晴らしい」と語る落合監督。その“夢”はファンに届いているか?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 出張中で、BSが映らない宿泊先に泊まっていた野球ファンの方は、さぞかしさみしい思いをしたに違いない。

 日本シリーズの第1戦と、第2戦の日のことだ。

 BS、CS、地上波ローカルにおける中継はあったものの、シリーズの中継開始以降、初めて地上波の全国中継がなかった。第5戦も同様の事態になるという。

 今日、一般的な野球ファンないしスポーツファンであれば、自宅にはBSやCSを視聴できるぐらいの環境は整えているだろう。だが、出張となると状況が変わる。CSはもちろんのこと、古い旅館などになるとBSさえ映らないことがある。それでも運よくローカル放送の中継圏内にいればいいが、それもかなわなかった人は、その時間、どんな思いで過ごしたことだろう。

 私にも経験がある。出張先で、世間的にも注目を集めているだろう試合、それに巨人がからんでいればなおのことだが、頭のどこかで「テレビで見られる」という感覚がいまだにある。そして夜になり、はたと気付くのだ。そうか、今やCSがなければ巨人戦であっても必ずしも見られるわけではないのだ、と。

プロ野球中継の「砂漠化」は止まらない!!

 あのときの日本にいながら異国にいるような、妙な隔絶感を今でもハッキリと思い出すことができる。

 プロ野球中継の「砂漠化」が進行していることを身に沁みるように実感する瞬間でもある。

 しかしシーズン中ならまだしも、今回は日本シリーズである。

 日本球界における最高のイベント、それももっとも緊迫感のある第1戦と第2戦は、もはや高校野球の全国大会よりも、ドラフト会議よりも、早大の斎藤佑樹が登板する東京六大学の早慶戦よりも下なのかと愕然とする。

 今回の異例の事態の背景には、中日の不人気があるという。かつては出場チームにかかわらず、日本シリーズは特別な存在感があった。

 それぞれの贔屓チームの枠を越え、たとえ普段はほとんど注目していないチームが出場した場合でも、プロ野球ファンであれば皆が熱狂する数日間だったはずだ。

【次ページ】 「勝てばいい」という時代はもう過ぎ去ったのだ。

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落合博満
中日ドラゴンズ

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