野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
元横浜にして現もつ鍋屋主人が語る!
「谷繁伝説」&日本シリーズ展望。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/10/27 12:20
「俺がビビった相手は松井さんでも清原さんでもねぇ」
――その投手陣を束ねる谷繁選手と中野渡さんは横浜時代にバッテリーを組んでいましたよね。
「谷繁さんは、俺をピッチャーにも、男にもしてもらった恩人だよ。今でも気に掛けてくれているし、CSの優勝の時もビール掛けの後にすぐ、『ゴルフ延びちゃったけど、待っとけよオマエ』って電話くれたしね。ただ、現役の頃はめちゃめちゃ怖かったって。甲子園でピンチの場面にリリーフした時なんて、高めにボールが抜けて0-2になった瞬間、タイムかけて突進してきたと思ったら、『同じ失敗してんじゃねぇ』って、みぞおちにランニングパンチだからな……。俺がビビった相手は松井さんでも清原さんでもねぇ。谷繁さんだけよ。サイン見てもマスク越しの顔がさ……いや、やめよう。俺さ、投球後にマウンドを降りて『おりゃ!』ってキャッチャーからの返球を奪い取っていた仕草が“気合い入ってる”と勘違いされてたけど、アレ、谷繁さんが怖いから早くボール貰って背中向けたかっただけだからな……」
「失投なんかしようものなら殺されるからな、多分」
――……なるほど。そういう厳しい指導の下に若い投手は鍛えられているんですね。
「古田さんなんかは、ピッチャーの来る球を活かしたリードをするけど、谷繁さんの場合は『絶対にここに来い』というスパルタ式のリードだからな。そこへ来なかったら怒るし、来て打たれたら自分が謝る。しかも、中日は谷繁さんの高い要求にも応えられるピッチャーが揃ってるからな。まぁ、谷繁さんがいて、その後ろには、ああいう感じの落合監督もいるわけだからな。ピッチャーの肝っ玉も鍛えられるだろうよ。失投なんかしようものなら殺されるからな、多分」
――西岡選手が「谷繁さんは裏をかくのがうまい。意識せずに投手に集中したい」と言っているように、ロッテ側も谷繁選手のリードは相当意識しているようです。
「ピッチャーがいるのに後ろに意識を取られたら、ますますロッテは厳しくなるだろうな。そういえば前の話だけどよ、谷繁さんが『ロッテの野球は甘い』って言ってたことがあったな。ロッテは勢いはあるけど、若い子もいるし、中日とは真逆の野球。0で抑えて、1点を確実に取りにいく野球をやってる中日からすれば、ロッテを研究すればするほどアラが見えてくるんだろうな。中日はスコアラー陣も最強だしデータも豊富。そのへんも気持ちの面でアドバンテージになってくるんじゃねぇか」