SCORE CARDBACK NUMBER

デトロイトの街とともに
再生を誓うマグレディ。
~NBAオールスター選手の意地~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byNBAE/Getty Images

posted2010/10/12 06:00

昨季はニックスに移籍し、復調の兆しが見えかけたが、怪我もあり24試合の出場に終わる

昨季はニックスに移籍し、復調の兆しが見えかけたが、怪我もあり24試合の出場に終わる

 個人的な印象だが、アメリカの中でデトロイトほど栄枯盛衰を感じる街はない。かつて自動車産業で栄えた街も、大手自動車メーカーの経営破綻などで衰退の一途をたどり、今は人口の減少や治安の悪化に悩まされている。

 トレイシー・マグレディが、選手としての再起を賭けた戦いの出発点として、そんなデトロイトのチーム、ピストンズ(厳密にはデトロイト市内ではなく郊外のオーバンヒルズを拠点としているのだが)を選んだのはまったくの偶然だった。それでも、過去7回NBAオールスターに選ばれ、2回リーグ得点王にもなった才能の持ち主ながら、腰や膝の故障により評価が急落したマグレディの姿は、デトロイトの街の盛衰と重なって見える。この夏のFA戦線でもほとんど話題にのぼらず、FA解禁から1カ月がたってようやく、リーグ最低保証額のサラリーでピストンズと契約したのだった。

「リーグじゅうから、選手として終わったなどと否定的なことを多く言われた。まるで神様か誰かが僕の才能を盗んでいったかのような言われようだった」とマグレディ。「自分は感情を外に出すほうではないが、言われたことは忘れていない。それがモチベーションとなっている」

デトロイト復興を担うのは、元ピストンズ選手の市長。

 ピストンズも今は低迷期。NBAチャンピオンだった6年前の栄光はいつの間にか薄れ、昨季は故障が重なり、成績はわずか27勝55敗に落ち込み、プレイオフ出場も逃した。チーム売却を前に、今シーズンも苦しい戦いが予想される。

 もっとも、マグレディはチームへの低評価にも反論、「それだけ軽んじられているのなら、僕らは世間を驚かせることになるだろう」と断言した。「このチームの中心選手たちはみんな、自分の力を証明したいという気持ちを持っている。それがいいところだ。他のチームからもいくつか話があったけれど、このチームには今の自分にあっていると思わせる何かがあった」とも言う。

 ところで、現在デトロイト市長として街の復興問題に対処しているのは、元ピストンズのオールスター選手でもあるデイブ・ビング氏だ。果たしてビング市長はデトロイトの街を復興させることができるのだろうか。そして、マグレディは選手として復活し、ピストンズ再生の一助となることができるのだろうか。

■関連コラム► スポールストラは不可能を可能にするか。~屈指のスター軍団を率いて~
► 大富豪とラッパーが描く、ネッツ躍進の青写真。

ページトップ