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スポールストラは
不可能を可能にするか。
~NBA屈指のスター軍団を率いて~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byNBAE/Getty Images

posted2010/09/29 06:00

スポールストラは不可能を可能にするか。~NBA屈指のスター軍団を率いて~<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

『エスキモーに氷を売る』というタイトルのビジネス本がある。著者はジョン・スポールストラ。マイアミ・ヒートのヘッドコーチ、エリック・スポールストラの父である。NBAチームのマーケティング等で実績を上げ、ビジネス本も多く出版しているやり手のマーケティングマンだ。本の副題には「魅力のない商品を、いかにセールスするか」とある。氷に囲まれたエスキモーの人たちにとって、氷はそれほど魅力的な商品ではないが、やり方によっては売り込むことも可能、ということを書いた本だ。

 今エリックが直面しているのも、まさに「エスキモーに氷を売る」のと同じぐらい難しいことだ。この夏、レブロン・ジェイムスとクリス・ボッシュのヒート移籍で3人のスーパースター(ジェイムス、ドウェイン・ウェイド、ボッシュ)が結集すると、人々は「このスーパーチームを率いるのはスポールストラには荷が重い。パット・ライリー(現球団社長)が自らヘッドコーチになるに違いない」と噂し始めた。

 確かにスポールストラはNBA選手としての経験もなく、NBAヘッドコーチ歴もわずか2年。コーチとしての手腕は評価されており、決して「魅力のない商品」ではないが、それでもカリスマ・コーチ、ライリーの現場復帰を期待する人がいるのも不思議はない。噂自体はウェイドら選手たちが否定し、ライリーも否定したことでいったん静まったが、すぐに結果を出さなければ再び交代の声が出てくる。それだけプレッシャーがかかった立場にあるわけだ。

父親から受け継いだ資質が試されるシーズン。

「これがどれぐらい大きな機会なのかは理解しているつもりだ」とスポールストラは言う。「しかし、私個人にとってもチームにとってもいま大事なのは、過程に集中することだ。目的地がどこなのかはわかっている。まわりの期待の大きさもわかっているけれど、そのことに気を回すのは間違いだ」と、あくまで冷静だ。

 父との話の中からコーチングのヒントを得ることもあるという。その父は、本の謝辞で「不可能なことを考えるのを許してくれたすべての人」に向けて感謝を述べている。

 不可能を可能だと信じ、成し遂げること。エリックが父から受け継いだその資質が試されるシーズンとなりそうだ。

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