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日本人内野手は“実力不足”なのか!?
田中賢介、外野コンバートの裏事情。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2013/07/08 10:30

日本人内野手は“実力不足”なのか!?田中賢介、外野コンバートの裏事情。<Number Web> photograph by Getty Images

スプリングキャンプでは内野手としてそつのない守備を見せていた田中賢介だが、スローイングに変化をつけた結果、送球難が再発。外野手に転向し、3Aフレズノ・グリズリーズからメジャー昇格を狙う。

スプリングキャンプ終盤から“再発”した送球難。

 それでは、何が今回の決定の要因となったのだろうか。

 まず第一に考えられるのは、キャンプ終盤から露呈した送球難だ。

 オープン戦でチーム最多の7失策を記録し、シーズンに入ってもコンバート前だけで15失策。そのうちのほとんどが悪送球によるものだった。

 実は田中はプロ入り間もない頃、送球難を抱えていた。しかしそれを見事に克服し、名二塁手として評価されるまでになったはずだった。

 確かにMLBの球はNPBの球とは比較にならないほど滑りやすく、投手だけでなく野手も感覚のズレに苦しむことがある。だが、今回の送球難はさらに別の原因があったようだ。

「ショート、サードに挑戦しようと思って(スローイングで)いろいろ変えた部分が上手くいかなかった。結局、自分のスローイングを取り戻すのに時間がかかってしまったんです」

 自分をアピールするために実行したはずの複数ポジションの守備練習が、二塁手としての本来のスローイングを見失わせるという逆効果をもたらしてしまったというのだ。

 最近は徐々にかつての感覚を取り戻しつつあった田中だが、前述のチームの事情も重なり、コンバートとなってしまった。

たとえ内野手全員が負傷しても、昇格の可能性はゼロ!?

 もう一つの大きな理由が、ジャイアンツ内野陣の充実ぶりだ。二塁手のマルコ・スクタロはもとより、三塁のパブロ・サンドバル、遊撃のブランドン・クロフォードと確固たる先発陣が揃っている上、複数ポジションをこなせる控え選手まできちんと揃っているのだ。

 1カ月ほど前のことだが、ジャイアンツのブルージェイズ戦遠征で一緒になった番記者に田中のメジャー昇格の可能性について尋ねたところ、以下のような答えが返ってきた。

「フライを捕球にいった内野手3人が正面衝突して全員が負傷してしまったとしても、それでもタナカが昇格するのは難しいだろうと思う」

 厳しい評価ではあるが、現在の田中がメジャー昇格の最低条件となる40人枠にすら入っていないという事実は変えようもない。(メジャーのゲームに出場するためには、40人の中でさらに25人の枠に入る必要がある)

 番記者の評価はつまり、たとえ先発内野手3人が同時に負傷したとしても、その穴を埋める内野手が現在の40人枠の中だけで十分にまかなえるということでもある。

 それだけジャイアンツの内野陣は安定しており、田中にとっては40人枠入りすらままならないというのが現状なのだ。

 チーム事情が異なるとはいえ、田中と同じ境遇からメジャー昇格を果たし、さらにチームを納得させる存在価値をも示した川崎宗則選手がいかに激しい競争を勝ち抜いたかがわかるだろう。その後マイナー再降格を経験しながらも、わずか2日後にメジャー復帰を果たしている。

【次ページ】 守備位置のコンバートで、非凡なる打撃センスを生かす。

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