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岡田武史がW杯直前の暗闘を激白!
あの「突然の戦術変更」までの苦悩。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/09/16 10:30

岡田武史がW杯直前の暗闘を激白!あの「突然の戦術変更」までの苦悩。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「運というものは誰にでもどこにでも流れている。その運を掴み損ねないか、掴み損ねるか。僕は運を掴み損ねたくないから、監督としてできる限りのことをやろうと思っているんです。もちろん、運を掴めるかどうかなんて分かりませんよ。でも、やらない限りは運なんて掴めない。最高の準備をしなかったら掴めない。運というものは、何もしないで勝手に来るものではないと僕は思っていますから」

 南アフリカW杯でベスト16に躍進した岡田ジャパンの戦いが終わってから、初めて岡田武史“前監督”にインタビューする機会があった。南アフリカの地では感情をあまり表に出さなかったものの、日本代表監督の重圧から解かれた今は普段の「岡田武史」に戻っていた。

 聞きたかった話をストレートにぶつけると、岡田からはストレートな答えが返ってきた。

 話は、従来のパスサッカーに修正を加えて守備に力点を置くサッカーに切り替えた決断の理由から始まった。

韓国戦直後に戦術変更を決意。そして再び振り返らなかった。

 本大会を従来のスタイルで行くかどうか。韓国戦の内容を受けて決めることにしていた、と岡田は言う。

「調子を落としている選手たちの状態が戻ってくるんじゃないかという期待はしていたし、韓国戦の前に何かを変えてしまっても選手たちは納得しないだろうという考えもありました」

 結局、韓国戦ではチームとしてパスミスがあまりにも多く、岡田は「これだとW杯では大カウンターを受けてしまう」と、チームを変える大きな決断を下すことになった。

 一度決断すると、岡田は振り返ることがない。

 5月30日のイングランド戦で阿部勇樹をアンカーに置いてブロック主体の守備に変更しただけでなく、GKを楢﨑正剛から川島永嗣に代え、ゲームキャプテンを中澤佑二から長谷部誠に切り替えていった。

 問題は、阿部を入れて中盤をどう配置するのか、だった。イングランド戦、コートジボワール戦でも明確な答えは見つけられなかったが、岡田が出した最終的な結論は中盤5枚をフラットに並べることだった。コートジボワール戦の後に行なわれた練習試合で3枚の中盤を横一線に並べたことがヒントとなり、宿舎に戻って試合の映像を見ながら熟慮を重ね、ようやく午前3時半になってひらめいたのだと言う。

「南アフリカに入ってすぐの紅白戦で試してみたら、バチーンとはまった。ジンバブエとの練習試合を組んでもらったのも、これを試したかったから。この試合で点は入らなかったけど、僕のなかでは(カメルーン戦に向けて)最高のイメージが出来上がった」

 そしてカメルーン戦の勝利が生まれ、勢いに乗った岡田ジャパンは自国開催以外では初めて決勝トーナメントに駒を進めるのである。

【次ページ】 「走るサッカー」の裏側にあった、地味だが重要な準備。

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