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19歳の“ツヨカワ格闘家”RENAが、
日本格闘技界の切り札になった日。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byTakeshi Maruyama

posted2010/09/11 08:00

19歳の“ツヨカワ格闘家”RENAが、日本格闘技界の切り札になった日。<Number Web> photograph by Takeshi Maruyama

互いに打ち合いとなった決勝戦。RENA(写真左)は高橋藍に対して手を緩めることなく連打し続けた

 8月29日、グランドプリンスホテル赤坂クリスタルパレスで開催されたシュートボクシングの女子世界トーナメント『Girls S-cup 2010』が、格闘技ファンの間で大きな反響を巻き起こしている。優勝したRENA(レーナ)の闘いぶりが、女子格闘技という枠を超えてファンの心を掴んだのだ。「大晦日のビッグイベントに出てほしい」、「RENAこそ魔裟斗の後継者だ」という声もある。

 RENAはこの春、高校を卒業した19歳。デビュー当時から“女子高生ファイター”“ツヨカワ(強くて可愛い)格闘家”として一般メディアの注目を集めてきた。とはいえ、それはあくまで極小カテゴリーのアイドルという扱いだ。実力面まで充分に評価されてきたわけではなかった。

 ではなぜ、今大会で突然、熱狂的な支持を得たのか。答えはいたってシンプルだ。RENAは、このトーナメントを通じて他のどの格闘家にも負けない魅力と可能性を見せつけたのである。

アイドルの枠を超えた圧倒的ポテンシャル。

 昨年、日本人7名、韓国人1名のメンバーで開催された第1回『Girls S-cup』でも、RENAは優勝を果たしている。しかし今回は8人中4人が外国人。ムエタイ王者やMMAの強豪も参戦するワールド・トーナメントだけに、ダントツの優勝候補ではなかった。主催者のシーザー武志会長も「今回はRENAが負けるかもしれません。それだけのメンバーを集めたつもりです」と語っていた。

 だが試合が始まってみると、観客はRENAのポテンシャルに圧倒されることになった。過去にDEEP女子王座やムエタイのタイトルを獲得したレジェンド的存在・渡辺久江との一回戦はヒザ蹴りをボディに突き刺して2ラウンドKO。準決勝では大胆な踏み込みで長身のケイト・マルチネスを攻略してみせる。結果は判定3-0。右クロスでダウンを奪っての快勝だった。

 そして“格闘家・RENA”の評価を決定的にしたのが高橋藍との決勝戦だ。高橋はデビュー1年あまりながら、シュートボクシングの総本部シーザージムの激しいトレーニングに耐え、急成長を見せている選手。伸びのある右ストレートとヒザ蹴りを武器に、直近4試合で3つのKO勝利を記録している。女子でこのKO率の高さは破格と言っていい。

【次ページ】 “死闘”で体現された、格闘技の根源的求心力。

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