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大ブレイクの榎田大樹を
支えた2人の“恩人”。
~先発転向に成功した虎の左腕~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKYODO

posted2013/05/14 06:00

大ブレイクの榎田大樹を支えた2人の“恩人”。~先発転向に成功した虎の左腕~<Number Web> photograph by KYODO

4月18日の巨人戦で2勝目。東京ドームは、プロ入りの“夢”を切り開いた思い出の舞台だ。

 独走する巨人との3連戦。能見篤史、スタンリッジで連敗して迎えた4月18日の第3戦、先発のマウンドに上がったのは、3年目の榎田大樹だった。今季から先発に転向した榎田は8回途中まで被安打6、1失点の力投で、同一カード3連敗を食い止めた。スタンドの阪神ファンは「ズルズルと負けない。今年の阪神は違う」と手ごたえを感じていた。

 福岡大から社会人の東京ガスを経て、'11年に阪神に入団すると、2年間で110試合に登板し、中継ぎの柱として活躍。昨季はオールスターにも選ばれたが左ひじを痛めて出場を辞退すると、9月末に左ひじの遊離軟骨除去手術を受けた。

 今季、新たな舞台として、先発ローテ入りに挑んだ。「ブルペンは専門職。9回トータルの力配分を考える先発とはまったく違う」と悩んでいた榎田に助言をくれたのが、東ガス時代の同期で自主トレも共にする楽天の美馬学だった。「先発の方がひじへの負担が少なくなる。ただ長いイニングを投げるためには、球種を増やす必要がある」。昨季、先発に転向し8勝を挙げ、ひじの手術の経験もある美馬は、カットボールやカーブの投げ方についてアドバイスをくれたのだ。

下柳剛から授けられた「力を抜く」投球で制球に磨きがかかった。

 生真面目な榎田は、阪神OBで先発と中継ぎ両方の経験がある下柳剛の元も訪れた。その時の下柳の言葉が今も胸に残っている。

「130km台のボールでも低めに投げれば簡単には打たれない。大事なのは力を抜くこと。力めば、ただの棒球になる」

 下柳のアドバイス通り、開幕から球を低めに集める投球を実践。4月は4試合に登板し、2勝2敗。防御率は、リーグトップの0.61と見事に結果を出した。

 4月25日の中日戦では6回を投げ、被安打1、1失点ながら、今季2敗目を喫した。榎田は反省を忘れなかった。

「何も考えずに抑えにいっていた時とは違った。四球が多くなると打者のリズムを崩してしまう。これが一番よくない」

 慣れない先発に戸惑いも多く、登板の前夜は何度も目が覚めてしまうという。このことを美馬に話すと、「投げた夜、ぐっすり寝られるからいいじゃん」という答えが返ってきた。頼れる友人の言葉に、“難しく考えずシンプルに! これも先発に必要な条件なのかも”と榎田は感じている。

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