SCORE CARDBACK NUMBER

無類の稽古嫌いで努力家、
新三役・隠岐の海のホンネ。
~五月場所、マイペースな主役候補~ 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

PROFILE

photograph byKYODO

posted2013/05/12 08:00

夏場所の目標を「2桁。できないと思いますけど頑張ります」とおどけて語った隠岐の海。

夏場所の目標を「2桁。できないと思いますけど頑張ります」とおどけて語った隠岐の海。

 新三役隠岐の海の、番付発表記者会見の席。「先場所の活躍を今場所も」と期待する質問を、師匠である八角親方(元横綱北勝海)が遮った。

「両横綱より素質がない分、稽古で補わなければいけない。隠岐の海は気づいているけどできないんだよな!」

 眉間にしわを寄せる師匠の顔に、ニューヒーローは「すみません……」とうなだれた。「稽古さえすれば横綱も夢じゃない大器」と期待されるなか、「無類の稽古嫌い」と押された烙印について、後日改めて隠岐の海に問うてみた。

「稽古、大っ嫌いですもん。実りのある稽古ならいいけど、やらされているような稽古はやりたくない。ストレスが溜まっちゃうんですよ」

 そう悪びれもせずに言い切る。場所前のこの日は、連日出稽古に現れる伸び盛りの勢を相手に、ぶっ続けの三番稽古。195センチの勢と、190センチの隠岐の海が互いに泥だらけになる大迫力の土俵だったのだが、本人は言う。

「熱があったからやる気はなかったんですけどね。体調不良で、中途半端に稽古しても意味がない。今日も師匠が止めないから32番も取ったけど、はたしていい稽古だったのかは疑問です。自分でやる気がなきゃ、いい稽古はできないもの――と彼は独自の考えを述べていた、って書いておいてくださいね(笑)」

「プレッシャーはない。横綱、大関を目指すのは自由ですよね」

 率直で飾らない性格だ。師匠は「普通のアンチャン。自覚が足りん」と嘆くが、それについても「公の場で弟子を褒める親方じゃないですから。普段は優しいですよ」と、歯がゆく思う周囲を気にもしない。マイペースな「イケメン」力士だ。右も左も取れる「なまくら四つ」。先の春場所では、全勝の白鵬を13日目まで単独で追い続け、11勝4敗の成績で2度目の敢闘賞を受賞した。島根県からは、121年ぶりとなる新三役だ。

「注目されるプレッシャーは、ないですよ。本番に強いタイプなんです。目標? 横綱、大関を目指すのは自由ですよね」

 反面、努力家の顔も持ち合わせている。地元水産高校時代には遠洋大型船を操る「3級海技士」の難関筆記試験を突破。航海士を夢見て取得した資格は10種に及ぶという。五月場所では、かつて目指した海を土俵に置き換え、この「大器」のエンジンは掛かるのだろうか。

関連コラム

ページトップ