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「僕も未練タラタラ」
さらば中年の星、松田努。
~日本ラグビーを支え続けた名FB~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byYuka Shiga

posted2013/04/25 06:00

「僕も未練タラタラ」さらば中年の星、松田努。~日本ラグビーを支え続けた名FB~<Number Web> photograph by Yuka Shiga

 その名前がアナウンスされると、スタジアム全体から温かい拍手が起こった。20代から変わらぬ長髪に、相手チームのファンからも歓声が上がった。

 松田努。42歳。東芝のFBとして2011年度はトップリーグ終盤の2節、リコー戦とパナソニック戦でリーグ最年長トライの記録を2週連続で更新した。最前線でのタックル、密集戦から最後尾でのキック処理、カバーディフェンスまで、驚異的な仕事量をみせ続けた。

「40歳過ぎてもここまでやれるんだね」

「何か、嬉しくなるなあ」

 そんな囁きを何百回聞いただろう。不惑のFB。その松田がスパイクを脱いだ。

 望んだ引退ではなかった。

「チームには『もう1年(現役で)やらせてほしい』とお願いしたけど、『もう勘弁してくれ』と丁重にお断りされました(笑)。ある程度のトシになってからは、いつそう言われてもいい覚悟でいたけど、実際に言われると、ゴン中山さんじゃないけど未練タラタラ。FA宣言したけど、どこからもオファーがなかった(笑)。普通のオッサンに戻ります」

数多の栄光に輝いても、20歳年下の新人と一緒にもがき続けた。

 ジョークの合間に本音がのぞく。まだやれる。まだやりたい。そのモチベーションは、自分のためではなかった。

「僕がオッサンになってからは、職場や試合場でよく『松田君のプレーを見ると元気になるよ、中年の星だよ』と言ってもらって、僕がプレーする大義はそこにあるんだなと、喜びを感じてたんです」

 コンタクトの激しさとスタミナの両面を求められるラグビー、しかも走り屋がひしめくバックスリーのポジションで、40過ぎの松田が経験と読みを駆使して若者と渡り合う姿が、どれほど多くの中年に勇気を与えてきたか。誰にでもできることではないからこそ、もう一度チャレンジして、メッセージを発したかった。

「次の人には、僕が驚くくらい大幅に記録を更新してほしい。大野均に『オレを抜くのはお前だ』と言っておきます」

 高校時代は無名のFWが、関東学院大3年で初めて日本代表に選ばれW杯4大会を経験。東芝での20年間で日本選手権を6回、トップリーグは5回優勝。19歳から42歳まで日本のトップを走り続け、20も年下の新人と一緒にもがき続けた。

 格好つけないことが最高に格好いい。中年の星の輝きを、僕らは忘れない。

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