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<トルコ挑戦1年目を振り返る> 木村沙織 「今年でバレーを辞めるつもりでした」 

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph byTakahisa Hirano

posted2013/04/30 06:00

ロンドン五輪でメダルを獲得し、トルコリーグに挑んだ全日本のエース。
出場機会は限られていたが、チームは今季の欧州王者に輝いた。
初めての環境で過ごした半年間。彼女が秘めた想いを打ち明けた。

 2013年3月10日、バレーボールのヨーロッパ王者を決める、チャンピオンズリーグでトルコのワクフバンクが2年ぶりの優勝を飾った。

 喜びを分かち合う選手たちの輪の中に、今季からトルコへと渡った、木村沙織がいた。

 歓喜から3日後、試合会場と隣接したホテルのカフェで、彼女の話を聞いた。

 右手を挙げ、すいませーん、と日本語でウェイトレスを呼ぶ。「チャイ、イキ、ホットチョコレート、イキ。プリーズ、オーケー?」

 身ぶり手ぶりを交えながら伝えると、わかった、と微笑みウェイトレスが去って行く。

「トルコ語どころか、英語もわからなくて最初はちんぷんかんぷん。今も喋れないけど、チームメイトとか、トルコって、みんながすごく優しい。いい人たちばっかりですよ」

 数分後、ドリンクを持ったウェイトレスがテーブルへ。お盆の上には、紅茶と、ホットチョコレートが2つずつ。

「あ、間違えちゃった。イキ(2つ)じゃなくて、ビル(1つ)だった」

 不安そうに覗きこむウェイトレスに、「オッケー、オッケー」と笑いかけ、ホットチョコレートと紅茶を交互に飲む。

「初めての環境にポンと入って、自分がどんな感じになるのかな」

 昨年9月にワクフバンクへ合流し、3月にヨーロッパ王者となるまで。トルコでの日々を、楽しそうに語り始めた。

「もう半年ぐらい経つんですね」

 ロンドンオリンピックまでは、ただひたすらに「メダル」を目指してきた。そして、28年ぶりの銅メダルを獲得。

「ロンドンが終わって、それからは全く別物。ゼロからじゃないけど、初めての環境にポンと入って、自分がどんな感じになるのかな、と、最初はワクワクしていました」

 2002年からの急激な経済成長を背景に、潤沢な資金を得たトルコリーグは、世界各国のトップ選手獲得に力を注いだ。

 2011年にトルコ勢として初のヨーロッパ王者となった、木村の在籍するワクフバンクは、その筆頭とも言える強豪チームだ。

<次ページへ続く>

【次ページ】 開幕当初はスタメン出場もあった木村だったが……。

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