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メジャーリーガーも納得! 日本人が精魂込めて作るベースボール・グラブ。 

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奥山泰広&高成浩

奥山泰広&高成浩Yasuhiro Okuyama & Seikoh Coe(POW-DER)

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2013/03/31 08:00

メジャーリーガーも納得! 日本人が精魂込めて作るベースボール・グラブ。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki
アスリートの心の中に渦巻くブツ欲を赤裸々に紹介し、解消していくこの企画。「ご意見番」として登場するのは、ファッション&モノ業界で長年活躍する“スマート”奥山泰広氏と、その相棒の“ワイルド”高 成浩氏。

大熱狂の中、WBCが終了し、開幕したてのNPBも大盛り上がり! そんな野球の盛り上がりに感化された奥山氏が、突然草野球に参加することに!? そこで筋金入りの野球オヤジ、高氏はアメリカの老舗ブランドを薦めたのだった。

奥山   いやあ、WBCは面白かったですね~。当初、侍ジャパンの実力が心配されましたが、1次ラウンドも決勝ラウンドも頑張ったじゃないですか。僕としては2次の台湾戦がシビれましたね。9回ツーアウトまで負けていたのに、同点にして延長で勝ち越して、見事逆転勝利!

   選手も観客も、お互いが相手をリスペクトしていることも良かったな。あれこそ国際試合の理想型だと思うよ。韓国やアメリカが1~2次ラウンドで敗退したり、逆にオランダを筆頭にヨーロッパ勢が頭角を現すなど、盛り上がった大会だったね。

奥山   まぁ、準決勝で伏兵、プエルトリコに侍ジャパンが負けちゃったのは残念でたまりません。

   うむ、8回裏のサインミスについては、俺みたいな野球オヤジには格好の話のネタだね。毎晩新橋のガード下で、サラリーマン野球オヤジがこれをネタにホッピー呑むだろうなぁ。それにしても、サッカー派のあなたが、そんなに野球に入れ込むのは珍しいね。

奥山   へへん、開幕したばかりの日本プロ野球にも注目してますよ。日ハムの大谷がはたして二刀流で結果を出せるのか!? とか、阪神の大型新人……2m近い身長だから、本当の意味でも大型ですが……の藤浪のピッチングにも期待してるんですから。

   ほほぅ。で、改まって、俺が使っているグラブを見たいなんて言い出して、何を企んでいるんだい?

奥山   いや、実は来月、草野球の試合に出るんですよ。で、高さんのグラブを借りようとしたんですが、高さんは左利きでしょ。だから、いっそのこと新しいグラブを買おうかと思って、何がお薦めか聞きたくて……。

   おお~っと。ウエストボールとピッチドアウトの違いもわからないヤツが、いきなり試合だって!?

奥山   某ファッション誌のチームがモデルチームと試合するらしく、その助っ人に頼まれちゃったんですよ。当日はオンナのコのモデルとか、女性編集者とかが応援に来るみたいなんですけどね。ハッハッハ、楽しみだなぁ。

   なにぃ!? け、けしからん。なんで俺は誘われないんだ。

奥山   和気あいあいとした親睦会に、さっきのような専門的な問題を出しそうだからですよ。で、イチ押しのグラブを教えてくれるんですか? くれないんですか?

   ここで教えないと、後々までナンか言われそうだからな。仕方ない……お薦めは俺も愛用しているウイルソンだな!

奥山   おっ、やっぱりベースボールの本場、アメリカのブランドがいいんですかね!?

由緒ある歴史、卓越した製造技術、巧みなマーケティングが融合。

   歴史があるからね。ウイルソンって、もともとは精肉業者だったんだぜ。精肉後、とっとと捨てられてしまう皮やスジを再利用したのが始まり。1914年のことだな。

奥山   へえ~、お肉屋さんだったというのも驚きですが、1世紀の歴史があるのは凄いですね。

   精肉の副産物でテニスラケットのストリングや、野球用のシューズを開発。早くも1年後にはスポーツ業界に、輝かしい足跡の第一歩を残すんだな。

奥山   もともと捨てるモノを再利用したってことは、原価率0%ってワケ!? なんて美味しいビジネスなんだ!(笑)。

   確かに!(笑)。ウイルソンってサ、なかなかの“やり手”だったみたい。1916年に会社名を現在の「ウイルソン」に変更するんだけど、これって当時のアメリカ大統領、ウッドロー・ウイルソンにあやかったんだぜ。当然、米国法務局が「恐れ多くも大統領の名前を安易に使うんじゃな~い!」ってんで、使用禁止を通達するんだけどさ、そしたらサ、トマス E.ウイルソンって一介の従業員を社長にして、社名を申請し直すんだよ(笑)。

1910~1920年代にセントルイス・カージナルスで活躍した当時屈指のスター選手、ロジャース・ホーンズビーと契約し、彼の専用モデルを発売。品質の向上と新製品開発に力を注ぐ一方、ウイルソンは巧みなマーケティング活動&販売戦略を実施。 

奥山   やるな~(笑)。

   その後、いろいろなスポーツ関連の会社を吸収&合併するなどして、ぐんぐんと業績をアップ。同時にマーケティングにも力を入れ、1919年にはシカゴ・カブスのオフィシャル・サプライヤーになったんだ。また、有名選手をアドバイザリースタッフにして、その専用グラブを発売してブランド力を上げるんだけど、こういうことは現代のスポーツブランドは皆やっている手法だよな。

奥山   なるほど、ブランド戦略にはソツがないですね~。

   もちろん、ウイルソンが開発するさまざまなスポーツ用品が、機能的かつ高品質であることが絶対なんだけどね。なにしろ、製造技術が今ほど確立していない80年ほど前に、すべての製品の2年間保証を打ち出してたんだよ。コレって、自社製品の品質によっぽど自信がないとできないぜ。また、当時の卓越した革職人が作った投げやすく受けやすいフットボールのおかげで、フォワードパス主流の近代アメリカン・フットボールの戦術が確立したんだから。

奥山   なるほど。本場アメリカの優れた革職人が作るグラブだからこそ、高さんは僕に薦めるんですね。

   いや、実は最新のウイルソンのグラブは、日本人の職人が作っているんだよ。

奥山   ええ? マジっすか?

【次ページ】 メジャーリーガーに評価される日本人グラブデザイナー。

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