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世界王者を25人も育てた
名伯楽の確固たる信条。
~“生きた伝説”フレディ・ローチ~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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photograph bySumio Yamada

posted2010/07/28 06:00

世界王者を25人も育てた名伯楽の確固たる信条。~“生きた伝説”フレディ・ローチ~<Number Web> photograph by Sumio Yamada

チャべスJr.とベルト獲得を喜ぶローチ(左)。過去にはタイソン、デラホーヤもコーチした

「親の七光りボクサー」のひとりと見られていたフリオ・セサール・チャベスJr.が、重要な試合で快勝し、これまでの評価を一変させた。去る6月26日、かつて父も戦ったテキサス州アラモドームで、強敵ジョン・ダディ相手に12回を戦い、文句なしの判定勝ち。41連勝を記録して初のWBCシルバーベルト(暫定王座)を手にしたのだ。

 勝ち名乗りを受けたチャベスJr.の傍らには、またもこの男がいた。フレディ・ローチ。マニー・パッキアオに今日の成功をもたらし、年間最優秀トレーナー賞を4度獲得。さらに世界ボクシング殿堂入りも果たし、すでに「生きた伝説」になりかけている当代一流の指導者である。

今や自ら探し歩かずとも、逸材のほうからやってくる。

 これまで手がけた世界チャンピオン25人は、師匠エディ・ファッチを凌ぐ数字だ。今や自ら探し歩かずとも、逸材のほうからやってくる。アミール・カーンもチャベスJr.も、もともと世界のトップで活躍できる実力者だが、ワイルドカードジムでローチに見てもらえば、さらに確実に成長できると信じて門を叩いた。

 チャベスJr.は「サンドバッグをバットで叩いたり、これまで体験したことのない練習をした」と言う。カルチャーショックを感じたようだ。「彼はのみ込みが早い。改良の余地はあるが、世界チャンピオンになれる才能はある」とローチは言う。

「チャンピオンは作られるものではなく、生まれてくるものだ」という古い諺をローチはよく持ち出す。王者になれる選手も、ちゃんと道を示してやらないと宝の持ち腐れに終わりかねない。自分はそのための良きガイド役だという。

ミッキー・ロークの協力で設立されたローチのジム。

 ローチの幸運は引退後にミッキー・ロークの私的トレーナーに雇われたことだ。今やハリウッドの名物となったワイルドカードジム設立に、このボクシング好きの俳優が協力したことは言うまでもない。

 ローチ自身は世界王座とは無縁の選手だった。だが激しい試合が人気を呼び、ESPNで22回もテレビ放送された。その後遺症だろう、現在もパーキンソン病に苦しみ、握手する手も震える。日に3度ピルを飲み続ける生活を送っている。50歳を迎えた今が働き盛りとはいえ、あるインタビューでこう語っている。

「(元ボクサーの)父は61歳のときにアルツハイマーで死んだ。それ以上に長生きしたいね」

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