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ナゲッツ躍進を陰で支える、
“いぶし銀”ミラーの存在感。
~14年間NBAでプレーした秘訣~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2013/03/25 06:00

ミラーは今年1月、NBA史上8人目となる1万5000得点+7500アシストの記録を達成。

ミラーは今年1月、NBA史上8人目となる1万5000得点+7500アシストの記録を達成。

 まるでレーシング・カーの中にワゴン車が一台だけ混ざっているようだと言えば、その異質さがわかるだろうか。デンバー・ナゲッツの活きのいい選手たちがレーシング・カーだとすると、ワゴン車はチームで唯一の30代(37歳)、控えポイントガードのアンドレ・ミラーだ。チームメイトたちがチーターのようにコートを走り、シューズにバネが仕込まれているのではないかと思うほど高く跳んでダンクを決める中で、ミラーは特に足が速いわけでもなく、地を這うようなプレー・スタイル。こうやって並べると一人だけ浮いてしまいそうに思えるかもしれないが、実際にはチームメイトたちから一目置かれる存在だ。

 チームメイトで、同じポイントガードのタイ・ローソンは「彼はチームの良識だ」と言う。「みんなが速いテンポでプレーしすぎていると、テンポを落とし、簡単なプレー、簡単なシュートを決め、チームをあるべき形に戻してくれるんだ」

 ナゲッツの成績は、3月14日現在44勝22敗で西カンファレンス5位。特に今年に入ってからの成績は27勝7敗と勢いに乗っており、プレイオフでは上位チームにとっても怖い存在となりそうだ。試合を見ると若手が伸び伸びとプレーしている印象が強いが、その陰には目立たないながら、チームを引き締めているミラーの存在がある。

スピードやジャンプ力がなくても“プレーを感じる”力があった。

 ナゲッツのヘッドコーチ、ジョージ・カールは、ミラーの能力を高く買っている一人だ。純粋なポイントガードとしてはリーグ史上トップ5に入るとまで言い、「彼のように実際に起こる前にプレーを感じ、見ることができる選手は、他にあまりいない」と絶賛する。

 ミラー自身は、一流のアスリートの中で14シーズンもの間プレーし、存在感を示し続けてきた秘訣を「自分ができないことはやらない。シンプルに戦うようにしている」と語る。若い頃からスピードもクイックネスもなかったが、一流のフットワークでディフェンスをかわし、味方の手元に完璧なパスを出すことができる。自分の持てるものをすべて使って戦ってきた。

 速く走れなくても、高く跳ばなくても一流のプレーはできる。ミラーは、得てして運動能力至上主義になりがちな私たちに、そんなことを気付かせてくれる。

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