スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
日本サッカーの勤勉と
アメリカサッカーの勇気。
~環太平洋選手権の設立を!~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2010/07/03 08:00
1-2でガーナに敗れ、惜しくもベスト8進出を逃したが、明るい未来を感じさせたアメ リカ代表
スポーツ・イラストレイテッドのコラムニスト、グラント・ウォールが、決勝トーナメント1回戦を終えた時点でのワールドカップ出場国のランク付けをしている。
上位4カ国は、アルゼンチン、ブラジル、ドイツ、スペイン。大会開催直前には、それぞれが6位、2位、5位、1位のランク付けだった。まあ妥当なところだろう。
以下は、オランダ、ウルグアイ、ガーナ、チリ、パラグアイとつづき、健闘した日本も10位にランクされている。大会前のランクが28位(下から5番目)だったことを思えば、やはりこれはサプライズの一種というべきだろう。ちなみに下から4つは、フランス、北朝鮮、ホンジュラス、アルジェリア。まあ、こちらも仕方がないか。
意外だったのは、アメリカが13位(大会前14位)、韓国が16位(大会前27位)にランクされていることだ。
これは過小評価ではないか。とくにアメリカは、このワールドカップの敢闘賞第一候補に挙げられると私は考えている。
アメリカほどゲーム終盤に強く危険な国はなかったはず。
グループリーグの段階から、アメリカは派手な試合をしてきた。なによりも序盤の失点が目立つ。イングランド戦では前半4分、スロヴェニア戦では前半13分、決勝トーナメントのガーナ戦では前半5分に、それぞれ初失点を喫しているのだ。
いうまでもないが、アメリカはそこから逆襲した。イングランドには1対1と引き分け(相手GKの信じがたいミスもあったが)、スロヴェニアには0対2から追いつき(審判の不可解な判定がなければ3対2で逆転勝ちしていたところだった)、アルジェリアからは最後の最後の追加タイムに決勝点を奪い(0対0で終わればグループリーグで敗退するところだった)、ガーナにも62分にはいったん同点に追いついているのだ。いいかえれば、ゲーム終盤でこれほど強く、これほど危険な国はほかになかった。
ついに「サッカー不毛の地」で国を挙げての熱狂状態が!!
その戦いぶりは「サッカー不毛の地」と揶揄されるアメリカ本国でも拍手で迎えられた。当然だろう。勇気や勤勉さは、戦術よりもわかりやすいからだ。ESPNの視聴率は、ワールドカップの放送としては史上最高の数字を叩き出している。
いや、前兆は大会前からあった。今回のワールドカップで試合のチケットが最もよく売れた国は、開催国の南アを除くと、実はアメリカ合衆国だったのだ。そのなかにはもちろん、在米メキシコ人や在米ホンジュラス人の購買も多くふくまれている。が、テレビの画面を通しても、アメリカのサポーターの応援は半端ではなかった。もしかするとアメリカのサッカーは、この大会を機にメジャー・スポーツの座に近づいたのではないか。
だとすれば、私はここで提案したい。日本が所属するAFC(アジアサッカー連盟)は、今後CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)との連携を密にしてはどうだろうか。