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左サイドからもっと攻めていれば……。
大久保嘉人の「献身」と「心残り」。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byFIFA via Getty Images

posted2010/07/01 11:50

左サイドからもっと攻めていれば……。大久保嘉人の「献身」と「心残り」。<Number Web> photograph by FIFA via Getty Images

 パラグアイ戦、PK戦に敗れ、多くの選手が涙を拭っていた中、大久保嘉人も溢れる涙を抑えることができなかった。

「まぁいろんな思いがあったんでね」

 大久保は、真っ赤になった目を伏し目がちにして、そう言った。

 今大会、大久保と松井大輔、本田圭佑の「3本の槍」は、日本の攻撃の中心になっていた。大会直前のイングランド戦、コートジボワール戦で手痛い連敗を喫し、結果を出せなかった。そのため、南アフリカに入ってから急遽、この攻撃スタイルを採用したのだ。だが、短期間での調整にもかかわらず、彼らは見事に役割を果たした。

 特筆すべきは大久保の突破力ではなく、守備力と運動量の多さだった。左サイドにいたが、DFの長友佑都が比較的引いて守るために相手のサイドの選手についていって、タッチライン沿いまで戻り、守備をすることもしばしばだった。そして、ボールを奪ったら、全力で前に走る。守備を嫌い、アタックの時だけに力を発揮する過去の大久保とは違ったスケールの選手がそこにいたのである。

「もうちょい俺のいる左サイドを見て欲しかったな」

「チームが守備的にやるというのが決まっていたし、1人がサボるとみんなに影響するからね。それは、チームとしてやらないかんことやけん、しっかりやれたと思う。ただ、攻撃の時、もうちょい俺のいる左サイドを見て欲しかったなって思った」

 日本の攻撃は、1トップの本田が右サイドに流れることが多く、また松井のキープ力があるので、どうしても右サイドに行く傾向にあった。また、戦術的にもカメルーンの左サイドバックはDF陣のなかで唯一身長が低く、オランダも左サイドバックのファンブロンクホルストが狙い目だったため、(日本の)右サイドから攻めることが多かったのだ。

「もう、右、右やからね。サイドチェンジとかしてくれたら、俺のところはフリーで仕掛けられた。そこまで周囲を見る余裕を世界は与えてくれないのもあるけど、もうちょい俺にボールを早くくれたら、もっといい攻撃が出来たと思うし、決定的なチャンスも作れたと思う。ただ、シュートはねぇ……オランダ戦も決めないかんと思ったけど、なかなか決まらない。その精度は、今後の課題よ」

「世界相手にも自分のドリブルは十分に通用した」

 だが、大久保のサイドは見ていて、気持ちが良かった。身体がキレている証拠なのだろう。ボールを持ったら仕掛ける姿勢をいつも見せてくれたし、鋭いドリブルは相手DFを翻弄した。大久保が仕掛けてファウルを誘い、ペナルティボックス前でFKを得ることも出来ていた。

「オランダ戦は、ドリブルで突っ込んでいったら、相手もアタフタして俺的には非常におもしろかった。世界相手にも自分のドリブルは十分に通用したし、1対1で相手が2人で取りに来ても抜けたからね。それに、けっこう走ったっしょ。オランダ戦は、かなりフリーランが多かったからね。まぁ全試合通して、自分としては動けたという感じはあった」

【次ページ】 「DFの“D”がつくぐらい守備ばっかりしとった」

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