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<メッシとロナウドの長所と短所> ヨアヒム・レーブ 「2人を抑えるパーフェクトプラン」~ドイツ代表監督の視点~ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byAFLO

posted2013/01/30 06:02

ドイツ代表に新たな風を吹き込んだ戦術家は、
アルゼンチンとポルトガルに勝利した男でもある。
メッシとロナウドを止めたレーブとドイツの秘訣とは――。

 ドイツ代表を率いるヨアヒム・レーブ監督は、国際舞台でメッシとクリスティアーノ・ロナウドの前に立ちはだかってきた指揮官のひとりだ。

 レーブが戦術を手がけるようになって以来、ドイツはW杯とユーロで一度もアルゼンチンとポルトガルに負けていないのだ。レーブは2人を抑えるエキスパートである。

 ただし、それが紙一重の結果だったこともレーブはよくわかっている。

「2人は想像を超えた選手。チームとして戦ったから抑えることができた。2人を見ているだけで、私は戦術的な好奇心を刺激される。彼らから多くのヒントを得ているよ」

 ドイツが誇る戦術家だけが知っている対メッシ、対ロナウドの秘策とは?

ドイツW杯、ユーロ2008、ユーロ2012と、3度ロナウドを抑えたレーブ。

 私は2006年W杯ではドイツ代表のコーチとして、それ以降の大会では監督として、彼らと顔を合わせてきた。

 特にロナウドとは不思議な縁があって、ドイツW杯の3位決定戦、ユーロ2008、ユーロ2012と、3回も大舞台で対戦している。そのすべての試合で戦術がうまくはまり、ロナウドをノーゴールに抑えて、ドイツは勝利することができた。

Joachim Löw
1960年2月3日、ドイツ生まれ。現役時代はFW。現役引退後、シュツットガルトの監督などを経て、'04年ドイツ代表のヘッドコーチに。'06年、クリンスマン監督の後を継ぎ監督に就任。'08年EUROで準優勝、'10年南アW杯で3位、'12年EUROでベスト4と好成績を収めている。

 ロナウドはボールを持っているときも、持っていないときもずば抜けた動きをする選手だ。ファンタスティックな技術を身につけているだけでなく、空中戦では驚異的な跳躍力を発揮する。ヘディングの打点は、とんでもなく高い。言うまでもなく、ブレ球のFKは世界一だ。

 では、なぜそんなスーパーマンのような選手を、止めることができたのか?

 ロナウドと対峙するとき、最も気をつけなければいけないのは瞬間的な予想外の動きだ。陸上選手のようなスピードと、鉛がつまったような体を武器に、一瞬で局面を打開してしまう。速さと強さで勝負してはダメだ。守備者には賢さが求められる。

 しかし、完璧に見えるロナウドにも、ひとつだけ弱点がある。それは難しい時間が続くと我慢できなくなり、イライラし始めることだ。スペインリーグでも、そういうシーンをときどき目にする。

 だからポルトガルとの対戦では、常にロナウドに圧力を掛けて、メンタルを揺さぶる戦略を取った。

<次ページへ続く>

【次ページ】 ラームやJ・ボアテンクの“お手本”のような守備。

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