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19年ぶりに文庫で復刊!
カズの激動の半生が甦る。
~「足に魂こめました」を読む~ 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

PROFILE

photograph bySports Graphic Number

posted2012/12/05 06:00

『「足に魂こめました」カズが語った[三浦知良]』 一志治夫著 文春文庫 571円+税

『「足に魂こめました」カズが語った[三浦知良]』 一志治夫著 文春文庫 571円+税

  数年前、世話焼きが好きな知人に「自分年表」を作ってみろと勧められた。聞けば、過去の出来事と未来の希望を年表に書き込むことで、自分の進むべき道がはっきり見えてくるという。彼は「デキるビジネスマンはみんな作っている」と言ったが、天邪鬼で面倒臭がりの自分にそんなことができるはずもなく、適当な相槌だけ打ってやりすごした。

  ふとそんなことを思い出すきっかけになったのは、フットサルW杯に出場したカズだった。また一つすごい歴史を作ったなと感慨にふけるうちに、この人の人生にはいったいいくつの“事件”が絡んでいるのだろうと思い至ったのである。

'92年11月3日の欄に記されるに違いない「魂こめました、足に」。

  もし、カズが自分年表を作ったら――。'92年11月3日の欄にはきっとこう記されるに違いない。

「アジアカップ広島大会 グループリーグvs.イラン  魂こめました、足に」

  0-0で迎えた後半40分、起死回生の決勝ゴールで日本を救ったカズは、マイクを向けられてそう言い放った。

  一志治夫が初めてカズと言葉をかわしたのは、この頃のことだ。「週刊文春」で始まる連載記事の取材のため、彼はスーパースターに面と向かった。場所は読売クラブのクラブハウス内にある、渋い佇まいの食堂だった。

  それから約1年後の'93年9月、一志はあの名言をタイトルとする一冊の本を上梓した。

『「足に魂こめました」――カズが語った[三浦知良]』

  その本には、'67年2月26日の生誕から'93年当時まで、26年間のカズの物語が克明に記録されている。

カズ自身と周囲、そして彼の出現で急成長した日本サッカーの物語。

  15歳で海を渡ったカズを待ち受けていたのは、想像を絶する厳しい現実と耐え難い孤独だ。理想と現実、成功と失敗の間にあるギャップを、カズは希望と努力で埋め続けた。評価してくれなかった人を見返してやりたい。そんな反骨心が、地球の裏側で這い上がるための原動力だった。それから小さな成功を積み重ねて王国で成功を掴み、凱旋帰国を果たして念願の日の丸を背負った。

  そんな26年間の年表を、本書は臨場感溢れるノンフィクションで彩っている。それはカズ自身の物語であり、彼を取り囲む人々の物語であり、また彼の出現と同時に急成長を遂げる日本サッカーの物語でもある。そこには、カズと日本サッカーの“今”につながるルーツがある。

<次ページへ続く>

【次ページ】  著者が「あとがき」で触れた“あの頃”と“その後”。

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