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リオ五輪プロ参戦で進む、
アマチュア界の大変革。
~独自のプロボクシング組織設立~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2012/12/03 06:00

ロンドン五輪で金メダルを獲得した村田諒太はプロに転向しなかったが、その今後に注目が集まる。

ロンドン五輪で金メダルを獲得した村田諒太はプロに転向しなかったが、その今後に注目が集まる。

  リオデジャネイロ五輪から、ボクシングにもプロの参加が認められる。これ自体は驚くまでもないが、アマチュアの国際ボクシング協会(AIBA)が独自のプロ組織「APB」を設立し、既存のプロとは一線を画した活動を始めるという動きには、当惑させられる関係者も少なくあるまい。

  AIBAが指名するアマのエリート選手に対し、契約金、サラリー、試合報酬等を支払い、しかも五輪出場資格は失われない――というのである。すでに「ワールドシリーズ・オブ・ボクシング」の名でプロの団体戦を立ち上げているが、本格的に個人戦も始めようというわけだ。

  早い話が、アマチュアの人材を囲い込み、その中から五輪の参加資格を与えようというもの。これに対して既存のプロは当然反発し、WBCのスライマン会長は早くから「プロに対する侵略だ」として怒りと警告を表明していた。

  だが、AIBAはすでに「アマチュア」の名を公式名称から外し、従来のアマチュアボクシングの替わりに「オリンピック・ボクシング」と称するよう指導している。長年IOCのメンバーで“商業五輪”のうまみを熟知している呉経国AIBA会長ならではのアイディアである。

村田諒太、清水聡らは断ったが、ロンドンの金メダリスト3人が契約。

  APBが本格的にスタートするのは来年5月だが、すでにロンドン五輪の大会MVPサピエフ、'12年年間MVPのウシク、アマ最強の呼び声高いロマチェンコと3人の金メダリストがプロ契約。日本でも金の村田諒太、銅の清水聡ら3選手に誘いがあったが、結果的に全員が断ったのは、新しい組織の実態をよく把握していなかったからだろう。だがAPBに参加することが五輪でのメダル獲得に有利となれば、今後は積極的に名乗りを上げる選手も出てくるはずだ。

  米国や日本のようにプロが根付いている国々にはAPBはあまり浸透しないかもしれない。試合報酬が億単位もある既存のプロとは違い、世界戦でも200万円程度では魅力に乏しい。

  だがボクシングの盛んな旧ソ連の国々には飛びつく選手も少なくない。AIBA内で呉政権を支えているのはこうした国々の一票なのだ。AIBAの強権的な姿勢にやや不安はあるものの、アマの逸材の多くが既存のプロに進まなければ、その影響が出てくるのは間違いない。

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