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善戦の先に「勝利」が無い試合。
オランダ戦は仏W杯と同レベルだった。 

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浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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posted2010/06/20 11:15

善戦の先に「勝利」が無い試合。オランダ戦は仏W杯と同レベルだった。<Number Web> photograph by Getty Images

 日本はうまく戦った。いや、うまく守った。

 引いて守ったカメルーン戦に対し、オランダ戦では、前線からのプレスとは言わないまでも、高い位置から相手のパスコースを制限することで攻撃を封じる策に出た。

 DFラインでハイティンガがボールを持つと、本田圭佑がボランチへのパスコースを消し、右サイド(オランダから見て左サイド)へパスを出させる。

 このとき、右サイドの松井大輔はマタイセンとファンブロンクホルストのふたりに目を光らせる。

 ハイティンガからのパスをマタイセンが浅い位置で受ければ、松井は一気に距離を詰める。さらに右へのパスで逃げられても、「左サイドバック(ファンブロンクホルスト)は前が見えていなかった。だから、ボールを持たれても怖くなかった」と松井。もし、マタイセンが寄せられるのを嫌がり、深い位置でパスを受けるようになれば、こっちのもの。彼のフィード能力を考えると、もはや危険な選手ではなかった。

オランダの前半ボール支配率が、69%という異常な値に。

 こうなると、オランダはいい形でDFラインから中盤へボールを入れられない。業を煮やしたスナイデルやファンデルファールトが、次第に下がってボールをもらうようになる。

 松井が「向こう(オランダ)も苛立っていた」と振り返る瞬間だ。さすがのオランダも、思い通りに試合を進められない様子がありありとうかがえた。

 特に前半は、このディフェンスがハマった。オランダは無為なパスをつなぐばかりで、決して効果的な攻撃はできなかった。

 それにしても、前半のオランダのボール支配率69%は異常だ。通常、ボール支配率が60%に達すれば、印象としてはかなり一方的な試合である。それがほぼ70%ということになると、そうそうお目にかかれる数値ではない。

 日本が前線からパスコースを制限し、ほとんどチャンスを作らせなかったことは間違いない。

 だが、結局はそこまでだったのだ。決して狙い通りにボールを奪って、自分たちの攻撃につなげることができていたわけではない。

 その先にあるのは、うまく運べてスコアレスドロー。それどころか、これほど一方的にボールを支配されれば、いつ、どこで綻びが生まれても不思議はない。

 案の定、闘莉王が完璧にクリアし切れなかったボールをファンペルシに拾われ、スナイデルに豪快なミドルシュートを決められた。

【次ページ】 '98年のアルゼンチン戦やクロアチア戦から進歩がない。

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