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昨季の躍動は夢だったのか?
A・ビルバオの悲しいチーム事情。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2012/11/01 10:30

昨季の躍動は夢だったのか?A・ビルバオの悲しいチーム事情。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

今季まだ本調子でないFWジョレンテと悩める指揮官のビエルサ。

 昨季ヨーロッパリーグとコパ・デル・レイで共に決勝進出を果たし、そのダイナミックなパスサッカーでヨーロッパ中に大きなインパクトを与えたアスレティック・ビルバオ。そのビルバオが今季、深刻な不振に陥っている。

 スタートでつまずいた昨季も同時点では勝ち点12(3勝3分3敗)の8位につけていた上、ELでは3節終えて2勝1分でグループ首位に立っていた。だが今季は国内リーグでは9節終了時点で勝ち点8(2勝2分5敗)の16位に沈んでおり、ELでも1分2敗と1勝もできておらず、早くも自力でのグループリーグ突破の可能性が潰えているのだ。

 昨季アスレティックは監督に招へいしたマルセロ・ビエルサの下、ダイレクトプレー主体の伝統的なスタイルから人とボールがめまぐるしく動くパスサッカーへとプレースタイルの転換を図った。

 ゆえにチームはビエルサの戦術を理解するまでに時間を要し、ビエルサはベストのシステムと人選を見出すまでに試行錯誤を繰り返した。その過程で陥った1年前の不振はいわば、「生みの苦しみ」だったと言える。

最初の躓きは練習場の工事遅延に関するトラブルだった。

 だが、今季は違う。

 監督の続投が決まり、昨季の主力メンバーがほとんど残ったため、1年間かけて作り上げたチームを熟成させつつ、さらなるオプションを加えていけばよい。そうなれば当然、目指すところも昨季以上――国内リーグではCL出場権の獲得、ELとコパ・デル・レイではタイトル獲得――となるはずだった。

 しかし、オフ明けのチームを待っていたのは、チームの熟成どころかサッカーに集中することすらままならない混沌とした状況だった。

 最初の事件はプレシーズン初日に起こった。完了しているはずの練習場の工事がまだ続いていることに激怒したビエルサが、口論を繰り広げた末に工事会社の人間に手を出してしまい、責任をとって辞任すると言いだしたのだ。

 最終的に監督交代という最悪の結果は逃れたものの、この騒動でチームに動揺が走ったことは間違いない。さらにビエルサは工事会社を「詐欺師」と厳しく批判した一方、クラブが工事会社を擁護する声明を出したことで、ホス・ウルティア会長ら執行部とビエルサの関係には確かな亀裂が生じてしまった。

【次ページ】 移籍が認められなかったジョレンテは心ここにあらず。

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