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西武を演説で奮起させたC・カーター。
熱パに轟く“文武両道”助っ人の咆哮。 

text by

加藤弘士

加藤弘士Hiroshi Kato

PROFILE

photograph byKyodo News

posted2012/08/30 13:10

米国屈指の名門・スタンフォード大学を3年で卒業した超インテリ助っ人外国人、クリス・カーター。熱き闘志と並はずれた頭脳で好調レオ軍団を支える。

米国屈指の名門・スタンフォード大学を3年で卒業した超インテリ助っ人外国人、クリス・カーター。熱き闘志と並はずれた頭脳で好調レオ軍団を支える。

 まるで大統領のような名演説だった――とは、言い過ぎだろうか。

 8月23日、埼玉県営大宮公園野球場。西武・ソフトバンク戦のプレイボール前の出来事だった。西武は主将のリードオフマン・栗山巧が左尺骨骨折で離脱し、若鷹軍団には2連敗中と暗雲が垂れ込めていた。そんな中、シートノックを終えた三塁側ベンチで、首脳陣やナインを前に熱弁を振るう男がいた。

 声の主は、新助っ人のクリス・カーター、その人だった。

「勝者と敗者の間には、1センチの差しかない。俺たちはチャンピオンを目指すチームだ。きょうはチャンピオンのように闘おう。チャンピオンは、あきらめない」

 山田通訳によって訳されると、西武ナインの肉体が火照った。勇気がみなぎり、活気が出て来た。

 主砲・中村剛也の先制2ラン。大崎雄太朗のダメ押しソロ。サブマリン・牧田和久の好投。5-2と完勝し、連敗は止まった。レオ軍団を再び上昇気流に乗せる、貴重な1勝となった。

 試合後、渡辺久信監督は勝因を聞かれると、目尻を下げて語った。

「きょうはね、カーターが試合前のミーティングで、みんなに闘志の湧くような言葉を言ってくれたんだ。それで『ヨシッ!』という感じになった。気持ちを奮い立たせる言葉だったよ」

「スピーチが少しでもチームの役に立てたら、うれしいですね」

 グッドイブニング、ミスター・カーター。ワタナベ監督が今夜のヒーローにあなたを挙げて、試合前のスピーチを讃えていましたよ。

 帰り際、わたしがつたない英語で話しかけると、照れながら言った。

「きょうの勝利はナカムラやオオサキ、マキタらの活躍があったからです。でも、スピーチが少しでもチームの役に立てたら、うれしいですね。僕はライオンズというチームが、大好きなんです」

 そう言ってガッチリと、わたしの右手を握った。ちょっとだけ痛くて、それがなんだか、うれしかった。

 ワシントンではジミー・カーター大統領がロナルド・レーガンに敗れ、その職を失った翌年の1982年。クリス・カーターは、カリフォルニア州に生を受けた。

 父・ビルさんは脳外科医。叔父も医師をしていた。クリス少年は幼少期から学業が優秀であると同時に、野球がうまかった。母が我が子に描く未来予想図はもちろん、「医者になって欲しい」だった。

<次ページへ続く>

【次ページ】 日本での活躍を毎試合、ネットでチェックする父親。

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