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ファンドの隆盛が問う、
競走馬と馬主の関係性。
~出資者たちから出た不満の声~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byKiichi Yamamoto

posted2012/08/28 06:00

ファンドの隆盛が問う、競走馬と馬主の関係性。~出資者たちから出た不満の声~<Number Web> photograph by Kiichi Yamamoto

口取り式は、出資者が競走馬と接する唯一の機会。少しでも傍に寄りたいのが人情だろう。

 JRAから発表される各種リーディングのなかで、オーナー部門だけは無風区。サンデーレーシングと社台レースホース(ともに社台グループが馬の供給元となっている、競走馬ファンドを運営する有限会社)が、持ち回りで1位2位を占める形が長く続いている。

 本体価格はもちろん維持費も低額ではない競走馬を、複数の出資者が費用を分担する、いわゆる共同馬主クラブ。ファンドの形態は匿名組合で、JRAが出資者個々の素性にタッチしないかわりに、取りまとめる会社に対しては厳格過ぎると思えるほどの管理体制を敷いている。そうすることで馬主資格のない人間への「名義貸し」等の不正が入り込む余地をなくしているのだ。生産界の雄、社台グループが提供する競走馬だけに質は圧倒的に高く、募集馬の数も一世代でそれぞれ80頭前後と、個人の馬主とは文字通り桁が違う。勝数や賞金の獲得額でまったく太刀打ちできないのもわかる。

 だからこそ風当たりも強く、JRAは「一口馬主」といった表現を認めない。馬主資格の厳しい審査を通っていないのだから紛らわしい言い方をしないでくれ、というわけだ。これは馬主会からの強い要請があったからに違いないと容易に読み取ることができる。

愛馬との数少ない接触機会である口取り式でも片隅に……。

 出資者たちは厩舎への直接的な関わりも認められてはいないので、愛馬への応分の負担をしているわりに、厩舎関係者がその存在を希薄に感じてしまっている事情もわからなくはない。出資した愛馬が優勝したときに、ウィナーズサークルに出て行って一緒に写真に収まるときだけが、唯一の接触の機会なのだから。

 ところが、先日の宝塚記念でオルフェーヴル(馬主はサンデーレーシング)が優勝したときのこと、出資者側から不満の声が爆発したのだという。そうした声を聞いて記念写真のカットを見てみると、なるほど、馬に近いポジションを調教師と騎手のファミリーで占めてしまい、出資者が片隅に追いやられてしまっていた。

 これを重く見た社台グループは、機関誌『サラブレッド』の巻頭コラムで「今回の口取り写真は、競馬を生業とするすべての関係者にとっての戒めの絵とすべき」と、厳しい論調で断を下したのだった。

 身内の揉め事を世に晒した形だが、馬主のあり方を問う波紋は拡大中だ。

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