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五輪で金、新リーグも発足したが……。
米国女子サッカーの明るくない見通し。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2012/08/22 10:31

五輪で金、新リーグも発足したが……。米国女子サッカーの明るくない見通し。<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

なでしこリーグの大阪高槻FCがGKソロらアメリカ代表の選手数人にオファーを出しているという報道もあった。金メダリストたちの去就に注目が集まっている。

 8月9日、オリンピックの開催期間中に、新しいアメリカの女子プロサッカーリーグの設立に向けての発表があった。

 新しい女子サッカーリーグは2013年春に8チームが参加してスタートする予定だ。いまのところ参加予定なのは、前身のプロリーグである「WPS(Women's Professional Soccer)」に所属していた、ボストン・ブレイカーズ、シカゴ・レッドスターズ、ニュージャージー・スカイブルーFCの3チームに加え、その他にシアトルに本拠地が置かれる見込みだ。

 前身のWPSは2009年からスタートし、澤穂希、宮間あやなどがプレーした組織。宮間が昨年のワールドカップ、そして今回のオリンピックと試合終了後にアメリカ選手と情感のこもった挨拶を交わしていたのは、WPSに参加していたからに他ならない。

 しかし今年に入って、WPSは今季のスケジュールをすべてキャンセルし、事実上解散という事態に陥った。3年間での赤字は数億円に上ったと見られている。アメリカの女子プロサッカーリーグが解散に追い込まれたのは2度目で、経営のむずかしさを改めて浮き彫りにしたのだが、アメリカのナショナルチームはWPSがなくなってしまったために、長期の合宿を張ってオリンピックに備えることができた。それが金メダルに結びついたのだから、WPSの解散は日本にとって不運だったということか……。

女子サッカーリーグが成立するために必要な3要素。

 アメリカ女子サッカー界には、WUSA(Women's United Soccer Association/2001年~2003年)、そしてWPS(2009年~2012年)と2つのリーグが存在したが、いずれも短命に終わっている。それはなぜなのだろうか。

 プロスポーツが商業的に成立するためには、

(1)放映権料収入
(2)入場料収入
(3)スポンサー収入

 の三本柱が重要となるが、3つの収入源のバランスが取れていることが望ましい(たとえばセリエAのクラブは放映権料収入に依存しすぎる傾向が強い)。

 アメリカの女子サッカーの場合、莫大な放映権料を望むのはむずかしく、すぐさま経営を安定させることは厳しいから、立ちあげて早々に赤字になるケースが目立つ。入場料も高く設定するわけにはいかないし、支援してくれる企業に依存することになってしまうのだが、景気の波に左右されやすいからとても長期的な展望に立って経営をすることはできない。

 地元クラブから選手が育って……というJリーグが示したような組織の育成モデルを作るには10年単位の時間が必要だし、アメリカのプロスポーツはそんなに悠長なことはできない構造になっている。新しいリーグの経営も決して見通しは明るいとはいえない。

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