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頭脳と技巧で主役を食う、
ラドワンスカに注目せよ。
~女王を欠くテニス界の名脇役~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2012/07/27 06:00

これまで8強が最高だった四大大会で準優勝。全米ではポーランド勢初の優勝を果たせるか。

これまで8強が最高だった四大大会で準優勝。全米ではポーランド勢初の優勝を果たせるか。

 ランキング1位がたびたび入れ替わり、四大大会の優勝者も毎度、顔ぶれが変わる。層が厚いと言えば言えるが、どんぐりの背比べと見た方が現実に近い。カリスマ的な女王を欠く女子テニスは今、人気にも陰りが見られる。

 ウィンブルドンでは、世界ランク1位のマリア・シャラポワが4回戦で敗退したため、2位のビクトリア・アザレンカと3位のアグニエシュカ・ラドワンスカに1位昇格のチャンスが巡ってきた。だが、2人の前に立ちふさがったのが元女王のセリーナ・ウィリアムズだった。アザレンカは準決勝で敗れ、ラドワンスカも決勝でセリーナに屈した。準決勝でのセリーナのサービスエースは大会新記録の24本。大会通算では102本に達し、女子の最多記録を大幅に更新した。

 セリーナに歯が立たなかったアザレンカが翌週のランキングで1位に昇格したことが、女子テニスの今の混迷ぶりの象徴だ。とはいえ、明るい面に目を向けることもできる。カリスマ不在は変わらぬ事実だが、実際、層が厚くなったと実感させる大会だった。ラドワンスカの存在感が増したことが大きい。セリーナは試合後、「第2セットは彼女のプレーが本当によくなり、少しパニックになった。不安を感じていた」と話している。勝てないまでも、大会のチャンピオンに脅威を与えたことは評価していい。

セリーナを幻惑し、ヒンギスも認めた多彩なショットとリズム。

 セリーナは「どんなボールでも返してくる」とあきれたが、ラドワンスカは守るだけの選手ではない。臨機応変に攻守を切り替え、自分から仕掛ける積極性も持っている。セリーナとの対戦が決まると「私にできるのはショットを色々ミックスしてプレーすることだけ」と話したが、実際、多彩なショットとリズムを操り、パワーテニスの元女王を幻惑した。

 かつてウィリアムズ姉妹のパワーに技巧で対抗したマルチナ・ヒンギスと似たタイプと言える。そのヒンギスも、ラドワンスカのプレーが好き、と話している。女子テニスは単調でつまらないという人こそ、彼女のプレーを見るといい。

 惜しまれるのは、ヒンギスほどのカリスマ性がないことか。本人には悪いが、名脇役が似合いのポジションだろう。頭脳と技巧を備えた渋い脇役には、今後もセリーナやシャラポワといった主役クラスを苦しめてほしい。

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