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圧倒的有利のスペインとどう戦う?
ユーロ決勝Tのライバル国を検証する。 

text by

西部謙司

西部謙司Kenji Nishibe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/21 10:31

圧倒的有利のスペインとどう戦う?ユーロ決勝Tのライバル国を検証する。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

グループステージではスタメンを務めることもあったセスク。デルボスケ監督は「このチームなら1トップでもゼロトップでも大丈夫。問題なくプレーできている」と語り、トーレス、セスク、ネグレド、ジョレンテ……と豊富な人材を誇った。

 個々の試合は予想外の連続である。グループリーグは最後の最後まで予断を許さない展開が続いた。ただ、プレーそのものに驚きはない。事前に予期されたとおりのプレーをして、勝ったり負けたりしているだけだ。

 実力的に抜けているのは、スペインとドイツである。これも下馬評どおり。

 とくにスペインは、唯一の存在といっていい。“ティキ・タカ(バルセロナが生み出したショートパス中心のサッカースタイル)”のパスワークはヨーロッパでは群を抜いていて、肩を並べられるチームがない。ボールタッチはもとより、ボールの動かし方のアイデアそのものが他国とはレベルが違っている。スペインだけが、少し種類の違うスポーツをやっている感さえある。

 バルセロナからメッシを抜いたのがスペインなのだから、当然といえば当然なのかもしれない。メッシがいないぶんコンビネーションに頼るので、よけいにパスワークが目立つ。ただ、勝負となるとメッシ抜きは大きなマイナスだ。

圧倒的に強いスペインの中盤で、勝利は確実かと思いきや……。

 フェルナンド・トーレスを使わないときのスペインは、セスクのゼロトップを採用している。

 狙いはバルサと同じで、中盤の数的優位を確保するためだ。サイドのウイングが高い位置に張り、CFは中盤に下りてくる。相手が4バックの場合、サイドバックよりセンターバックが高い位置で守ることはないので、中央のセンターバック2人は誰もいないエリアを守ることになる。つまり、サイドの2人で4バックの位置を決められる。スペインのウイング2人vs.4バックが確定した時点で、それより後方のエリアはスペイン8、相手6の2人の数的優位が確保される。

 人数が同じでもスペインからボールを奪うのは簡単ではないのに、2人も多いのだから中盤まではスペインの圧倒的な有利になるわけだ。あとは、相手のMFが疲れ切るまでパスを回してスクリーンに穴を空け、バイタルエリアに侵入し、それまで無人地帯を守っていたセンターバックを引っ張り出してしまえば一丁上がりである。

 ところが、理屈はそうでも実際にはそこまで上手くはいかない。

【次ページ】 スペインが疲れるのを待つ省エネ戦法で戦うライバル国。

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