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“死のグループ”で3戦全勝!!
ユーロでドイツが好調な3つの理由。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/20 10:30

“死のグループ”で3戦全勝!!ユーロでドイツが好調な3つの理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「大舞台に弱い」と言われ続けたマリオ・ゴメスがユーロで覚醒。因縁のライバルであるオランダ戦では2ゴールを決めた。

 ユーロを戦うドイツ代表が予想とは異なる戦いで、調子をあげてきている。

「この厳しいグループでなければ、我々も優勝候補だった」

 組み合わせが決まった直後にレーブ監督はそう語っていたが、ポルトガル、オランダ、デンマークとの“死のグループ”であるグループBを3戦全勝で通過したのだ。大会前には悲観的な声の大きかったドイツでも、ここにきて'96年以来となるユーロタイトル獲得への期待が膨らみ始めている。

 いまのドイツ代表に希望を見出せるのには、3つの理由がある。

 1つ目が、ドイツのサッカー文化の根底にある“Zweikampf”だ。この言葉は「一対一」の勝負を意味する。ドイツでは、試合ごとに各選手の一対一の局面での勝敗についての統計がとられ、勝率が高い選手は賞賛され、低ければ批判の対象になる。選手たちは、子どものころから、一対一で相手に勝つように教え込まれている。プロになってからも、試合のあとに、試合前のミーティングで、あるいは契約交渉の席で、この勝率がその選手の資質を表す重要なデータとして選手には提示される。それほどまでにドイツ人にとって、一対一の勝敗は大切なものとなっているのだ。

まるで「堅いサッカーで試合に勝つ」往年のドイツ代表のよう。

 グループBの最終戦が終わった時点で、ドイツ代表の一対一の局面での勝率は55.45%。これは全チームの中でトップの成績だ。ユーロを戦うドイツ代表には、2年前のW杯で賞賛されたときのような、華麗な攻撃はまだ見られない。それでも、しっかり勝ちきるその姿は、まるで「堅いサッカーで試合に勝つ」往年のドイツ代表のようだ。この堅さを支えているのが、一対一の局面での強さなのだ。

 2つ目が、今大会のラッキーボーイであるマリオ・ゴメスの起用法。スタメンで出場するゴメスは3試合で3ゴール、1アシストの結果を残しているが、彼の残す結果ではなく、起用法がドイツ代表の戦いにオプションをもたらしている。

 大会前にはこれまで通りクローゼがスタメンFWだと見られていた。しかし、大会直前になってレーブ監督の頭に一つの不安がよぎったという。

 今年3月から4月にかけて負傷で戦列を離れていたクローゼのコンディションの問題だ。これは大会直前に、負傷明けのメルテザッカーに代えてフンメルスをスタメンに起用した判断とも通じるのだが、レーブ監督は現在のドイツ代表の絶対的な強みであるコンディショニングを重視した。その結果、これまでのクローゼのチームへの貢献度を度外視して、シーズンを通してプレーを続けていたゴメスのスタメン起用に踏み切ったのだ。

【次ページ】 当初は批判されていた、ゴメスの自己中心的な動き。

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