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圧倒的有利のスペインとどう戦う?
ユーロ決勝Tのライバル国を検証する。 

text by

西部謙司

西部謙司Kenji Nishibe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/21 10:31

圧倒的有利のスペインとどう戦う?ユーロ決勝Tのライバル国を検証する。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

グループステージではスタメンを務めることもあったセスク。デルボスケ監督は「このチームなら1トップでもゼロトップでも大丈夫。問題なくプレーできている」と語り、トーレス、セスク、ネグレド、ジョレンテ……と豊富な人材を誇った。

2000年からスタートした育成改革が結実したドイツ。

 スペインと並ぶ優勝候補はドイツである。2000年にスタートした育成改革の最初の集大成が今大会だ。

 スペインにないCFマリオ・ゴメスの存在が、ドイツの攻撃アプローチを単純化している。

 ボックス内にボールが入ったとき、必ずそこにいるマリオ・ゴメスは、いわば最も動かないCFなのだが、球際の強さが図抜けている。

 単純なクロスをゴールに変えられるので、スペインに比べればドイツの攻撃はずっと楽。とことん精度を追求しなくても、タイミングさえよければアバウトでも点になる可能性がある。例えば、サイドを破ってニアに速いボールを入れさえすれば、マリオ・ゴメスが直接ゴールするか、彼が潰れてもこぼれ球を狙える。考え方としては実につまらないが、ドイツ人は実利をとる。

 エジル、ケディラ、ミュラーらのドイツは、堅実なだけのドイツサッカーのイメージを一変させた。4年前とは大違いだ。しかし、2年前とはさほど変わっていない。南アフリカW杯で予定より早く若手の台頭があった。文句をいう筋合いではないが、そのぶん新鮮味はなくなった。

改造中のイタリアがベスト8に進出したことは、大きな意味を持つ。

 イタリアは思い切ってモデルチェンジした。

 予選では4-3-1-2を採用、本大会ではユベントス方式の3バック、さらにアイルランド戦ではまた4バックに戻した。プランデッリ監督の意図は明確で、ボールを動かせるイタリアを目指している。ピルロ、モッタ、デロッシ、マルキージオの4人がその象徴だ。

 スペインを目指しているわけではないと思う。しかし、従来よりも攻撃を重視したチーム作りになった。そのために、まだハマりきっていないところもあり、もしグループリーグで敗退していたら「それみたことか」とバッシングされて元に戻ったかもしれない。その意味で、ベスト8進出はプランデッリ監督とイタリアにとって大きな一歩になったはずだ。

【次ページ】 原点回帰でベスト8を射止めたイングランドの内実。

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セスク・ファブレガス
フェルナンド・トーレス
マリオ・ゴメス
チェーザレ・プランデッリ
ロイ・ホジソン

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