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19歳の大型新人を死球で
歓迎するメジャーの“掟”。
~ブライス・ハーパーへの洗礼~ 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byYukihito Taguchi

posted2012/06/17 08:00

19歳の大型新人を死球で歓迎するメジャーの“掟”。~ブライス・ハーパーへの洗礼~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 互いに、2週間前の“事件”を感じさせることはなかった。5月23日、ナショナルズ戦で7勝目を挙げたフィリーズの左腕コール・ハメルズは、サラリと言った。「これまでと同じ。頭をよぎることなんてまったくなかったね」。一方、ナショナルズの19歳の超大型新人、ブライス・ハーパーも「相手はオールスター選手だから」と冷静に振り返った。2人の言葉だけなら、通常の試合後と変わりはない。だがこの試合は、同地区の球団の対戦という以上に、ハメルズとハーパーの再対決に注目が集まっていた。

 発端は5月6日、2人の初対戦の第1打席だった。ハメルズが、初球に93マイル(約150km)の速球を、計ったかのようにハーパーの背中に当てたのだ。

「彼には当てにいった。幼い頃からそういうことを見てきたからね」

 試合後、ハメルズは、何のためらいもなく、故意に狙ったことを認めた。近年では少なくなっていたものの、古くからメジャーでは、有望新人との初対戦では、ブラッシュボールや故意死球などで威嚇することが慣習となっていた。その意図は、「Welcome to Big League(大リーグへようこそ)」。

故意死球を受けた後、一瞬のスキを突き本盗を成功させたハーパー。

 メジャーの厳しさを知らしめるために、手荒く歓迎する行為が、不文律として存在していた。そんな長年の“掟”を踏襲したハメルズは、その後、MLB機構から5試合の出場停止処分を受ける。無論、ハメルズ自身は覚悟の上で、異議申し立てもしなかった。

 周囲は賛否両論だった。その一方で、過剰な表現でハメルズを批判したナショナルズのリッゾGMは、機構側から罰金処分を受けることになった。故意死球を認めたわけではないだろうが、誹謗されるものではないとの見解が、結果的に示されたともいえる。

 仮装をさせるイタズラなどユニークなものもあるが、投手、打者のストライク判定を含め、メジャーの新人への対応は実は厳しい。日本の体育会的な上下関係とも違う“掟”は、確実に存在する。

 故意死球を受けたハーパーは、その後三塁まで進むと、一瞬のスキを突いて本盗を成功させるセンスの好さを見せた。厳しい洗礼を浴びる選手は、それだけ認められている証拠。ハメルズの手荒い歓迎は、その表れだったに違いない。

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