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国境を越えて愛される、
スペインの“特別な存在”。
~ラウールをめぐるエピソード~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byAFLO

posted2012/06/10 08:00

シャルケのホーム最終戦で4人の息子と一人娘と笑顔を見せるラウール。内田篤人の姿も。

シャルケのホーム最終戦で4人の息子と一人娘と笑顔を見せるラウール。内田篤人の姿も。

 EURO2012のスペイン代表23人枠をめぐるFW陣の争いは熾烈だった。スペイン国内では、ソルダードとの争いを制したネグレドや、土壇場で調子を上げリストに名を連ねたトーレスに注目が集まった。だが、その傍らで、今回も代表には呼ばれなかった、ひとりのストライカーの名前を新聞紙上などでよく目にした。来季からカタールのアル・サッドでプレーする、元代表のラウール・ゴンサレスだ。

 5月末、彼はFAO(国連食糧農業機関)のアンバサダーとして、食糧難に苦しむアフリカ・サヘル地域のチャドを訪問し、世界に緊急支援を訴えた。

 サヘル地域では1700万人が飢餓に苦しんでおり、栄養失調となっている5歳以下の子供は100万人にも及ぶ。現在、世界で最も食糧事情が悪い地域だ。

 痩せた山羊が歩くトウモロコシ畑を訪れ、地元の子供とボールを蹴ったラウールは当地でもスターとして歓迎され、慈善試合には6000人が駆けつけた。彼はFAOを通して「食糧危機に苦しむ人々を助けるには、早急な支援が必要」というメッセージを投げかけている。

かつてプレーした小さなクラブを消滅の危機から救ったラウール。

 かつてプレーしたクラブを消滅の危機から救った、というニュースも各方面から賛辞を送られた。

 レアル・マドリーの下部組織に加入する以前、13歳までプレーしていたマドリード南部の町クラブ、サン・クリストバル・デ・ロス・アンヘレス。

 この小さなクラブは財政難に陥っており、6月末までに4000ユーロ(約42万円)の支援がなければ消滅するという苦境に立たされていた。

 それを伝え聞いたラウールがすぐに4000ユーロを用意したことで、クラブは無事消滅を回避できたという。ペドロ・アルバレス会長は「ラウールの支援は嬉しい。彼はこの町にとってのすべてだ」と感激している。

 独シャルケからアル・サッドへの移籍については、国内外で金銭目当てだとの声もある。しかし、どこでプレーしようとも彼がファンから愛されるのは、アフリカや地元での地道な活動や貢献を忘れないからだろう。

 EUROでその姿を見ることはないが、スペイン国民にとってラウールはいつまでも特別な存在であり続けている。

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